08
瀬戸の言うとおりだった。
考えとく、考えとく……で、ついに卒業。
今日こそは、はっきり何か言わないとと思っていたけど。
俺に群がって来た知らない女を調子に乗って相手にしているうちに、竹下は教室をひとりで出て行ってしまった。
「ユワー。やばくね?」
「……、」
「ユワー。やばいよ?」
お前に言われなくてもわかってるよ。
とりあえずかばんをひっ掴んで、イスから立ち上がった。
女子が一瞬驚いてざわつく。
俺は、自分の制服に付いていた校章も、ありとあらゆるボタンも、ピアスも、全部取ってその場に置いた。
「帰る。勝手に好きなだけ持ってけ」
「わー。ユワかっこいい」と、瀬戸の笑いが混ざった声がして。女の文句を言う声も聞こえて。
そんなのお構いなしに、走った。
廊下の少し先に、竹下を見つける。
そのままついていくと、竹下は中庭の自販機の前で立ち止まって金を入れた。
でもなかなかボタンを押さずに、目線を左斜め上にさまよわせている。
中庭。
自販機。
左斜め上。
あー…、おしるこ。
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