07
「ユワちゃんさっいてー」
「…うっせぇ」
「保留て。電話か!」
「元はと言えばてめぇの管理不行届きのせいであいつが柴田に流れたんだろーが!」
「俺カンケーねぇし」
久しぶりに学校に来ていた瀬戸。
こいつは何度正しても俺のことを「ユワ」と呼ぶ。漢字をそのまま読んで。
「で、どうすんだよ」俺を唯一心配してくれる遠藤が、割って入る。
「保留っつーのは…、ちゃんとした返事したかったから言ったんだよ。あのとき思わず「へぇー」とか言っちゃって、テンパってその後に何言っていいかわかんなくなったから」
「お前の勝手な心理状態で返事保留にしたわけね」
「変なこと言ってぐだぐだにしたくなかったし」
「んなもん既にぐだぐだだろーが」
「うっせぇぞ瀬戸!」
瀬戸はあくまでも、俺のこんな状態が楽しいだけらしい。
俺はいままで真剣に誰かを好きになったりしたことがない。
いつも全てが適当だった。
そんな俺を中学時代からずっと知っているからこそ、遠藤や平野は親身になってくれるし、瀬戸はおもしろがるんだろう。
「とにかく、ちゃんと返事してやれよ」
遠藤は紳士的だ。だからモテるのか。
あんなうるさい彼女じゃなくて、もっといい女と付き合えばいいのに。
でも遠藤はあのうるさい女が世界で一番好きらしい。意味不明。
「…考えとく」
「だめだめ。ユワちゃんは考え過ぎて気付いたら卒業の日とかになっちゃうから、行動するなら即がいいって」
「……考えとく!」
俺が立ちあがって屋上を出ようとするとき、後ろで「ユワちゃんは今時流行りのツンデレだね」と、瀬戸が俺を茶化す声が聞こえた。
断じて言う。
俺はそんなカタカナ4文字で表わせるような、安い男じゃない。
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