04
3年目。やっと竹下と同じクラスになれたのに、竹下との距離は壊れるどころか全く縮まらずに、秋まできてしまった。
そのうち、竹下を、他の男に盗られた。
相手は柴田っていう、胡散臭いやつ。
同じサッカー部に入ってる平野にあいつのことを訊いたら、「女くせぇ」と言っていた。女々しいということだと思う。
「まぁ簡単に言えば、由和とは正反対って感じ。俺はあんまりいい奴だとは思わない」
俺と、正反対ねぇ。
ということは、竹下の中でそもそも俺は恋愛対象外だったということか。
教室で視野の片隅に入り込む竹下は、友達と柴田の話をしては照れくさそうにはにかんでいて。
やっぱり俺の入り込む隙間は、もうどこにもないと思った。
毎日毎日、柴田の部活終わりを待つ竹下。
どんだけ健気で、どんだけあいつのことが好きなんだよ。
俺なら絶対に、竹下のことをこんな暗い教室にひとりで置いてきぼりになんてさせないのに。
だって俺、帰宅部だし。
ふたりの仲をぶっ壊してやりたいと思った。
俺の親友が「いい奴だと思わない」ような奴と、付き合ってほしくなかったから。
でも、竹下が幸せならそれでもいいか、とかも、ちょっと思った。
だからあいつらが付き合ってしばらく経った冬の日の放課後に、教室にいる竹下に会いに行った。
自分の気持ちにけじめをつけるために。
竹下は、俺が「俺のこと好きなんだろ」と言った時はいつも、それを否定するでなく肯定するでなくへらへら笑っていた。
だから俺も、こいつはもしかしたら俺に気があったりして、なんて調子に乗っていたところがあった。
いつもみたいにかまかけて、あいつがきっぱりと「好きじゃないよ」と言ったのなら、そのときはすっぱり諦める。俺は男だから。
きっと竹下みたいな小動物系女子なら、世の中にはいっぱいいる。
大丈夫。
竹下じゃなくてもいい。
大丈夫。
大丈夫。
…多分。
[ 66/89 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]