03
なんて、悪態をつきつつも。
あの二人のやり方がずっと頭に残っていた俺。
ふたりとも好きな女を手に入れてるわけだし。
あながち不正解なアプローチではないのかもしれない。
「竹下やっぱ、小動物っぽい」
「小動物?」
「前も言ったじゃん。ハムスターとかみたいって」
「あぁ、うん」
だから、ケーキを一緒に食うことになった日。
俺なりに勇気をだしてみた。
「かわいいな」
………言わなきゃよかった、かも。
死ぬほど恥ずかしい上に、竹下はきょとんとした顔で俺のこと見るだけだし。
挙句の果てに
「ごめん聞こえなかった、今なんて言った?」
だと。
俺にこんなセリフ何回も言わせる気か、この女。
「…は?お前度胸あるな」
俺がひと睨みすると竹下はあからさまに怯んで。
そんな姿がかわいくて、思わず笑ってしまった。
竹下にしてもらって嬉しいことも、言ってもらって嬉しいことも、結局最後には恥ずかしくなって全部冗談で済ませてしまう。
そうすれば俺の気持ちがばれることもないし、竹下との距離感を壊すこともないと思ったから。
「冗談冗談って……由和って、案外ヘタレだね」
「…殺す」
「ごめんごめん」
遠藤はちゃっかり2年目も竹下と同じクラスになりやがった。
だから俺は、遠藤にばかり教科書を借りに行く。そのときに竹下をちょっとでも見れたらまぁ嬉しいかな、って。
俺のこんな健気な気持ちを知ってか知らずか、遠藤は暴言を吐くから許せなかった。
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