05




初めてあげたもの、だって。

そんなこと言って、また私を惑わせる。

自分の一言で、私がどんなにドキドキしてどんなに泣きそうになるのか、知っているんだろうか。知っていてやっているならかなり悪質だ。




「だいたい里垣くんなんでこんなところに居るの?」

「居たら悪い?」

「悪くないけど…」

「お前のこと教室から追いかけてきたんだよ。悪い?」




息をのむ。耳を疑う。

一瞬、言葉が理解できなかった。


よく見ると、だらし無く崩れた制服。やっぱり、ボタンも装飾品も全て無くなっていた。

かろうじて、ベルトが残っているくらい。




「お前、俺に言い忘れたことあるだろ」

「え?」

「言えよ」




出た…お得意の、言えよ。


言い忘れたことって、何のことを指しているんだろう。

むしろ私が言いたい。私に言い忘れたこと、無い?って。


私が黙り込んでいると、彼は少し苛立った様子で私を見下ろした。




「…あ、卒業おめでとう?」

「違う」

「3年間ありがとう?」

「違う」




また、くだらないこと言うな、って言われそう。

そう予想していたら、里垣くんは案の定大きくため息をついて、薄く口を開いた。






「俺とこのままバイバイでもいいの?」






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