01
泣いても笑っても
――いまこそわかれめ いざさらば
数ヶ月なんて、あっという間に経った。
どんなに私が足掻いたって、嫌だと泣いたって、季節は廻るし、時間は進む。
とうとう、この学校を卒業する日がやってきたのだ。
卒業式の当日も、里垣くんはグループの仲間とわいわい騒いでいた。
その中には、いつも授業に出ない瀬戸くんもちゃっかり居たし、3年間同じ彼女と付き合い続けた一途な遠藤くんも居た。
里垣くんは、この日こそはと声をかけてくる女子全員と写真を撮っている。
いつもなら絶対に嫌がるんだろうけど、卒業式くらいは、というサービス精神が彼の中にはちゃんとあるらしい。
私はといえば、あの「告白保留事件」以来、里垣くんとの進展は一切なし。
今は、机に集まってきたいつもの仲間の思い出話に適当に相槌を打っているところ。
正直私の3年間の思い出は、里垣くん以外に、ない。
確かに友達との日々も楽しかったけど、私の青春の全ては、里垣くんが持っていってしまったのだ。
でも彼には、そんなこと全然気付かれてないんだと思う。
以前、歩くのが遅いのを(里垣くん的には私の足が短いのを)「覚えとく」と言いつつすっかり忘れていたように
私の告白の返事を保留にしたことだってきっと、彼の頭の中には無いはずだ。
でもここまできたら、もうそれで良かった。
こんなにも華麗にスルーされると、逆に諦めがつく。
今日だって里垣くんの制服のボタンというボタンからあらゆる装飾品までをめぐって、女子は争奪戦を繰り広げるんだろうし。
私の入っていく隙なんてない。
さよなら、か。
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