06
「へぇー」
里垣くんの低い声が、空気に溶け込む。
次の瞬間、後頭部に熱を感じた。てのひらサイズの、あったかさ。
「お前、やっぱ俺が好きだったんだ?」
それは、里垣くんのてのひらで。私が顔を上げるのと一緒に、それは離された。
頭、撫でられた…?
…なんだ里垣由和。意味不明。
でもとりあえず、彼の言葉にこくりと頷く。
「わかった。覚えとく」
それだけ言うと彼はベンチから立ち上がった。ついでに、おろおろする私の二の腕を引っ張り上げて立たせてくれた。
「帰るぞ」
「え、え!ちょっと!」
「なに?」
「返事、は?」
薄暗い公園で、彼の顔はよく見えない。
けれど多分、微笑って……いや、嘲笑っているのだと思う。
彼は小さく息を吐くと、言った。
「保留」
2011/03/19
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