05
「柴田くんと別れたのは、里垣くんのせいだよ‥」
ゆらり、と流れる空気が変わるのを感じた。
里垣くんが、俯いた私の頭を睨みつけるように見つめているのが、見なくたってわかる。
さっき「ちがうよ」って言ったばっかりだもんね。そりゃ、睨みますよね。
私は、そのまま言葉を続けた。
「私が、里垣くんのこと好きだから」
「…………」
「陽介に本気になれなかったから」
「…………」
「愛想尽かされちゃったぁ‥」
里垣くんは、何も言わなかった。
また、ゆらりと空気が変わるのを感じる。なんだか重たくて嫌な空気。
手痛く振られる、って本能的にわかった。わかったというよりは、最初からわかっていた。
里垣くんが、私みたいなチンチクリン相手にするわけなんてないこと。
それでもこうして一緒に居てくれたり、助けてくれたりするから。
ちょっと、調子に乗ってただけ。
わかってたよ、そのくらい。
だから、
「…なんか言ってよ」
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