03



「じゃあ、里垣くんも小泉先輩のこと教えて」

「はぁ?」




交換条件。これでどうでしょう、王様。



里垣くんは目をまぁるくして私を見たけど、それも一瞬。

すぐにニヤリと笑って言った。




「いいよ。全然喋るけど?」

「(…よっしゃぁ!)」

「俺に命令してきた女、竹下が初めて」




ま じ で。


そのニヤリの中に、いろんな黒い思いが交錯しているのかと思うと、なんだか怖かったけど。


里垣くんはカプリコのごみを小さく丸めてゴミ箱に向かって投げた。

それはきちんとゴミ箱に入らずに地面に落ちた。…カッコ悪い。


彼はゆっくりと立ち上がってゴミを拾い、それをきちんとゴミ箱へ捨てた。

やっぱり里垣くんは、育ちのいいお坊ちゃんだな。




「そもそもなんで俺が小泉さんと付き合ってると思ったんだよ」

「…だってクラス中の噂だったよ」

「嘘つけ」

「いや、本当だってば」




真っ向から私の言っていることを否定する里垣くん。

本当だと言っても、まだ疑っている様子だ。




「だって私が屋上で…小泉先輩のこと聞いたら里垣くん、知ってるの?って言ったじゃん」

「うん」

「噂になってるよって言ったら、小泉さん綺麗だもんなって…」

「あぁ、あれ?」




私の説明で、状況をやっとのみ込めたらしい里垣くんはポンと手をたたいた。




「噂って、小泉さんが美人っつー噂が広まってるんだと思ってた」

「え?」

「知ってるの?も、お前小泉さん知ってんだ?って意味で言った」

「そう、だったんだ…」

「俺と付き合ってるってなってたのかよ。殺される」

「誰に?」

「瀬戸」





瀬戸とは、いつも里垣くんたちと絡んでいる仲間のひとり。

里垣くんや遠藤くんみたいなイケイケ男子とはちょっと違う、爽やかヤンキーみたいな人。

あんまり学校にも来てないから、目立たなかったけど。




「瀬戸、小泉さんと付き合ってんの」

「…そうなの?」

「あの日も、瀬戸のことで小泉さんに相談受けてた」




だから屋上にふたりで居たのか…。

私もやっと、点と点が繋がった。



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