02



私の言葉は夕闇に溶け込んで消えた。


言ってしまった後で後悔した。もしかしたら、里垣くんお得意の「冗談」だったかもしれないのに。

また私はまんまとそれに引っ掛かって、自分の気持ちを素直に言ってしまった。

…どうせまた、笑われる。




「竹下はさぁ」

「うん」

「なんなの?」

「え?人間だよ」

「だからくだらねぇこと言うなって」




いやいや…。あなたの質問に答えただけですけど、

なんて言えないから「ごめん」と言ってへらりと笑う。

でも里垣くんは私の顔なんか全く見ていないうえに、ぴくりとも笑っていなかった。




「なんで柴田と付き合ったの」

「それは、好き…だったから」

「なんで柴田と別れたの」

「それは……言えない」




里垣くんが好きだから、だなんて言えるはずない。

ふん、って鼻で笑われて終わりだ。


1年生の春から、3年生の冬の今日まで、変わらずにずっと彼が好きなのに。

そんな悲しい終わり方したくない。

どうせならちゃんと言ってちゃんと振られたほうがいい。




「言えよ」




でもこの暴君は、私の黙秘を認めてくれない。

「言えよ」と言えば誰でも口を開くと思っているらしい。

あいにくこの気持ちは、そんな脅迫に軽がる乗ってポロっと口にできるほどやわなものじゃない。だから私は、考えた。



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