01
隠しても隠しきれないこと
おひさまが終わっていく。
そんな空を眺めながら、私たちはなぜか、ケーキを食べたあの公園のベンチに座っていた。里垣くんが突然「疲れた座りたい」なんて言い出したから。
子供かよー…、って。
「もうすぐ卒業っすよ」
「そうっす、ね…」
「さみしいね」
「学校楽しいからね」
何が言いたいんだ、この人。
たわいもなさすぎる会話に、ついていけるようでついていけない。
私が戸惑っている間に、里垣くんはカバンからなぜかカプリコ(イチゴ味)を取りだして、勝手に食べ始めた。
自由すぎる…自由すぎる…。
「いや、そうじゃなくて」
「え?違う?」
「うん。違う」
「なにー?」
ふと目線を上げて顔を見ると、彼は真顔で空を見つめていた。
そしてそのままちょっとも表情を変えずに、言葉を吐きだす。
「俺と会えなくなるよ?寂しくない?」
うおぉ、なんだこの絶対的自信に充ち溢れた言葉は…!
でも、少しだけ甘ったるんだ声をだした里垣くんにキュンなんてしたのは、紛れもない事実だった。
よく見ると、口の端にカプリコのコーンをちょっとだけつけている。…そんなあどけない姿もやっぱり好き。
彼は今回はそれに気付いて、自分の指先で唇をなぞった。その指先がとても綺麗で見とれてしまう。
「…寂しい、かな」
思わず、言葉が零れた。
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