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静まり返った教室の中で、里垣くんのグループだけが何もなかったかのように騒いでいた。

陽介たちは揃って教室から出て行って、私はかなり肩身が狭かった。

里垣くんのおかげで惨事は免れたものの、よく考えてみれば結局、私の浮気疑惑は晴れていないし。




「あの…、私、浮気なんてしてないから…」




誰に言うともなく、とりあえず弁解してみた。

さらに凍りつく空気。…最悪です。

普段全く目立たない私が、こんな形で目立ってしまうなんて。これじゃいい話の種にされてしまう。




「バカかお前」




私がスカートをギュッと握りしめて俯いていたら、教室の後ろから大きな声がした。

聞き慣れた低音。聞き慣れた言葉。

振り向くと仲間の輪の中で里垣くんが、私を見て微笑っていた。




「竹下が浮気できるような女じゃねーことぐらいここにいる全員がわかってるよ」

「……」

「てかお前が浮気できるなら、世界中の人みんな浮気してるから」




どういう意味でしょうそれは…。



でも里垣くんは「決まったぜ」とでも言いたげな顔で、満足そうに身をひるがえした。


フォローしようとしてくれた…んだよね。きっと。

自分に都合のいいように解釈すると、里垣くんの不器用な優しさが身に染みて、すごく嬉しくなった。


次の瞬間に、凍っていた空気が融解されるように「清香が浮気だなんて誰も思ってないよ!大丈夫!」と友達が集まって来てくれた。

それならもうちょっと早く来てくれればいいのに、なんて思ったことは、里垣くんに免じて内緒にしておこう。




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