10
次の日。
嫌々ながらも学校に行くと、真っ先に目に飛び込んだのは、周りに4、5人の男子を従えて私を睨みつける陽介だった。
ありえない。睨みたいのは私だし!
久しぶりにこんなにむしゃくしゃしたかも。あんまり腹なんか立たない性格なのに。
女々しいんだよ、柴田!!
「浮気とかありえねぇな」
机についた私に、嘲笑うようにそんな言葉が飛んできた。それは陽介の取り巻きの声だ。
彼の言葉に、教室内がざわついた。
誰が浮気だって?
え?まさか竹下?
的な感じで。
もう!もっかい言う!
柴田、お前のやり方女々しいぞ!
何か言い返してやろうと、彼のほうを振り向く。
誰になんて言われたっていい。言いたいこと言わせてもらう!だって私、浮気なんてしてないもん!
でも、振り向いた私の目に映ったのは、想像していた、ニヤニヤした陽介とその友達ではなく。
陽介の座る机にてのひらをバチンと突き付けて、陽介を睨みつける里垣くんだった。
ふたりの顔の距離、推定3センチ。
陽介いいな!!
じゃなくて!
「なに?里垣くん」
これだけメンチを切られているにも関わらず、陽介はふわりと笑って里垣くんに尋ねた。
…この度胸には、拍手したい。私なら失神してしまう。
一方の里垣くんは、彼の言葉には微塵も笑わずに、じっと目を見つめていた。
「柴田」
「だから、なに?」
「お前、浮気されたの?」
「…だったらなんだよ」
里垣くんの言葉が予想外だったのか、一瞬陽介がひるんだ。
その瞬間を見逃さなかったのだろう。
里垣くんの鋭い目が、いつも以上に光った気がした。
「女に浮気されるって……だっせ」
「……………っ」
「俺、したことあっても、浮気なんかされたこと1回もねぇけどな」
里垣くんが、鼻で笑う。いつもみたいに、ふんって。
そしてそのまま、何も言い返せない陽介の元を離れて、仲間の輪に何事もなかったかのように帰っていった。
[ 46/89 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]