08
そのあといつものように手を繋いで帰ったけれど、陽介はよっぽど気に食わなかったのか、全然話をしなかった。
こんなに怒った陽介見たことないなぁ…。
でも私はそんな彼に手をひかれながら、里垣くんの言葉ばかりを思い返していた。
『俺、小泉さんと付き合ってないよ』
本当かな。
別れちゃったのかな。
それとも最初からデマだった?
「清香!」
突然、陽介が声を荒げたから。びっくりして顔を見上げると、今度は見たこともないくらいに困った顔をした陽介がいた。
「なに…?」と、恐る恐る聞く。
彼は大袈裟にため息をついた。
「何回も呼んだけど?」
「え、うそ?ごめんね」
「いいけど…何考えてた?」
「や、別に、なにも…」
次の瞬間、陽介はチッと短く舌打ちをした。
まじめで、大人しくて、清楚な彼が、舌打ち?そんなのありえない。きっと聞き間違い。
でも彼は私から手を離すと、吐き捨てるように、私に言った。
「もういい。お前いらない」
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