07
その時。
「清香ー……あ、」
教室に、部活を終えた陽介が入ってきた。
話している私と里垣くんを見て、少し硬直。
「帰ってきたね、彼氏」
「あ、はい…」
「じゃ、お先に」
里垣くんはニヒルに笑って立ち尽くす陽介の横を通り過ぎた。
彼には、つかみどころが全くない。
だいたい何しにこの教室に来たのかもわからないし。結局何を言いたいのかもわからなかった。
そのまま里垣くんはぺたんぺたんと教室を出て………なぜか再び戻って来た。
「たけしたぁ」
「なっ、なに?」
「俺、小泉さんと付き合ってないよ」
「…へ?」
「気になってたみたいだから、教えとく」
凍りつく空気。
そんな中を気にせず里垣くんは去っていった。
残された私と陽介。沈黙がとっても痛い。
「えっと…今のは、」
「な、なんだろうね!意味わかんない」
「清香、里垣と仲良かったんだ」
「や、別に、そんなには…」
明らかに陽介は不信がっている。そんな様子に私がうろたえるから、さらに怪訝な顔をした。
「てか別に里垣が誰と付き合ってても関係なくね?」
「ないない!」
「気にしてたの?」
「全然!あの人の勘違い!」
「……ならいいけど」
ぶすっと膨れる陽介。
…あぁ。
いつも余裕そうに見える陽介でも、ヤキモチなんて、妬くんだ。
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