04
ぺたん ぺたん
私はパブロフの犬と一緒だ。
この音を聞いただけで、反射的にドキドキする。
ぺたん、
踏みつけられたうわばきが、すぐ近くで止まった。
でも、なんだか緊張して。顔を向けることが出来ないで居た。
「竹下まだいたんだ」
声の主は、私のドキドキなんて知らないで、声をかけてきた。
ぎぎぎ、と振り向くと、立っていたのは紛れもなく里垣くんで。
私はへらりと笑うことしかできなかった。
「……そっか。彼氏待ちか」
「え、あ、うん、はい」
「なにテンパってんの」
彼は教室の中へ入ると、なぜか私の隣の席へやって来て座った。
ふん、といつものように私を鼻で笑う。
最近ずっと、話してなかったから。この笑い方に懐かしさすら感じた。
「健気だなお前」
「そうかな、普通だよ」
「俺、彼女に待ってもらったことなんか1回もねぇぞ」
「そうなの?」
小泉先輩クラスになると、天下の里垣由和さえも待たないんだ。
なんだか自分が、彼氏に媚びてる女みたいな気がして、嫌になった。
でもそんな私の心中なんて全く察していない里垣くんは、私をまじまじと眺めて頬杖をついた。
「いいな、こんな彼女」
……いいな、って。
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