03
「じゃあ清香。また明日」
陽介は毎日私を家の下まで送ってくれる。歩くときだって小さい私のペースに合わせてくれる。
そしてお別れのときは、軽く唇を合わせて、やっぱり清楚な笑顔で手を振って帰っていく。
素敵だと思う。
すごく好きだと思う。
でも、付き合えば付き合うほど、彼と里垣くんを比べてしまう自分がいた。
里垣くんならなんて言うだろう。里垣くんはどんなふうに手を握るだろう。
里垣くんは小泉先輩にどんな言葉をかけてばいばいしているんだろう…
って、バカか、私は。
「清香今日も柴田くん待ち?」
「うん、そう」
「毎日毎日、ほんとラブラブだね」
「へへ。そうかな」
学校では、私と陽介の交際は大っぴらになっていた。
陽介も私も自分のことをぺらぺら喋るタイプじゃないけど、陽介の周りにも私の周りのもおしゃべりな友達が多いから。
あっという間に話は広がっていた。
きっと里垣くんも、知ってるはず。別に関係ないって思ってるんだろうけど。
みんなが帰った後の教室は、薄暗くて静かでちょっと怖い。
誰か話し相手でもいたらいいのに、なんて思うけど、まさかそんなことで人を巻き込むわけにはいかないし。
そう思っていた矢先。
私の、大好きな気配がした。
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