02
「彼女って、誰?」
「3年の小泉先輩だよ」
小泉先輩とは、モデルのようにすらっと背が高くて痩せていて、里垣くんと同じく顔のすごく小さな先輩だ。
この学校のアイドル的存在……というよりは、高嶺の花すぎて後輩の男子なんて誰も近寄れないくらいの凄い人。
私だって廊下でたまにすれ違ったら、あの素敵オーラに圧倒されて転んでしまいそうになる。
きっと、里垣くんと並んだらすごくお似合いなんだと思う。
絶対に、私なんて敵わないや。
「相手が小泉先輩ならもう文句も言えないよね…」
友達は深く納得したようにそう呟いて頷いた。
今日は、クラス中の女子がその話題で騒いでいる。どんだけ影響力あるんだ、里垣くん。
前に里垣くんに告白をしていた女子をちらりと見ると、彼女は机に突っ伏して泣いていて。友達に慰められていた。
「里垣くんから告ったらしいよ」
「そうなの?」
「うん。あの里垣くんが告白するなんて、よっぽど好きだったんだろうね」
友達の言葉に、またギシリと胸が軋む。
この子に1ミリも悪気がないのはわかっているけど、これはもはや言葉の暴力である。私にとっては。
この話題には、もう触れていたくなかった。
「あの。話の途中で悪いけどトイレ行って来るー」
「うん。いってらっしゃい」
朝礼ぎりぎりまで、トイレに立て篭もっていよう。
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