07
ケーキを交換する。
彼はなんの躊躇いもなくショコラケーキを口に運んだ。
「これもやっぱうまい」
「里垣くん甘党なんだね」
「うん。スイーツ大好き」
スイーツ…そんな言葉が彼の口から。
でも里垣くんが幸せそうだから、もうそれでいいや。
「あ。そういえばさ、今日の告白のこと人に言うなよ」
「え?うん言わないよ」
「俺の好感度が下がる」
「最初からないよぉそんなのー」
「…喧嘩売ってんの?」
怖い…!
でも口の端にチョコがついている。
かわいい…!
「ここ」
「ん?」
「チョコ」
「ついてる?」
「うん」
「取って」
「はぁ!?」
彼は自分の顔を私にぐいっと近づけた。
陶器のようにつるつるの肌が、目の前に。
本当の本当に、こういうことを何とも思わずにやっているんだろうか。誰にでもしているんだろうか。
彼の口の端を、指先で拭う。
手が尋常じゃないくらいに震えた。
「食っていいよ」
「…へ?」
「そのチョコ」
「た、食べないよ!」
「ふはは!ほんとに食ったらぶっ飛ばしてるし」
またジョークか。
もうなにが本気でなにが冗談なのかわからない。
なんでも言うこと聞いて下手なことをすると、いつかぶっ飛ばされるだろう。恐怖。
私がペーパーでチョコを拭うと
それを見ていた彼は「ありがとな」と柔らかい言葉をかけた。
それだけで、彼をもっと好きになるなんて
きっと私はもう病気なのだろう。
2011/03/06
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