05
ケーキ屋さんで、里垣くんリクエストのいちごのマカロンケーキと、私の好きなショコラケーキを買った。
一応別々の箱に入れてもらって。
「おまたせ」
「おせぇ」
「そう?」
「あんまり待たせんな」
どこまでも自分勝手な人。
でも、ケーキの箱を差し出すとその目は急激にキラッキラに輝いた。
そしてなんとその箱を、両手で受け取ったのだ。乙女か!
「ありがと」
「いいえ」
「めちゃくちゃ嬉しい」
「よかった」
里垣くんが笑う。子猫を見せてきた時見たいなふわふわ笑顔。
今日はそこに、生クリームとマカロンの甘さがトッピングされていた。
こんなものひとつでそんなに幸せそうにしてくれるなら、いくらでもパシられてあげたい。
「んーじゃあどこで食う?」
「え!」
「公園?」
「一緒に食べるの!?」
「は?嫌なら帰れ」
「いやいや!食べます!」
まさか一緒に食べることを想定してくれていたなんて。
ケーキはお持ち帰りすると里垣くんが言い出した時点で、家に帰ってひとりで食べるものだと思っていた。
今度は私が、感激のあまり赤くなる。
そんな私を見ていた彼は、仕方ないな、というように笑って息をついた。
「竹下やっぱ、小動物っぽい」
「小動物?」
「前も言ったじゃん。ハムスターとかみたいって」
「あぁ、うん」
「かわいいな」
かっ…!
かわいいと今言いました!?
「ごめん聞こえなかった、今なんて言った?」
「…は?お前度胸あるな」
だってもう一回聞きたかったんだもん。聞き間違えじゃないよね、って確かめたかった。
怪訝そうに眉間にしわを寄せて。
でも里垣くんは、楽しそうに笑っていた。
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