04



さっき女の子をがっつりふっておいて、今そんなに甘い気分なのか、この男は。

世も末だ。


でも、こんな顔してケーキが好きって…

かわいいじゃない!




「わかりました…じゃあ、行く?」

「行く?じゃねぇし。決定事項だし」

「あぁ、そうですよねすみません」

「行くぞ」




どうやら里垣くんには、お目当てのケーキ屋さんがあるらしい。

私は足の速い彼に、やっぱり走るようについていった。

この間の話、「覚えとく」なんて言いながら覚えてないんだな。

要するに、私なんて眼中にないってことか。まぁいいけど、それでも。




「買ってこい」




場所は、私も行きつけのケーキ屋さんだった。

お店の横にはカフェスペースがあって、そこでケーキセットを食べることができる、雑貨屋さんのようなかわいらしい雰囲気のお店。

そのお店の数十メートル前で彼は立ち止って、私に命令。




「お店で食べないの?」

「馬鹿かお前。俺があんなかわいらしいところでケーキ食えるか」




あ、そこはわかってるんだ。一応。

でもそれでもどうしても、ケーキが食べたいんだなぁ。


ちょっと照れくさそうな里垣くんがかわいくて、キュンってしながら気付けば「何買ってくればいい?」なんて弾んだ声を出している自分がいた。

…いつの間にか、召使いみたいになってるんですけど、私。




「いちごのマカロンケーキ」

「ぷっ!」

「……殺すぞお前」

「いやややや…すみませんすみません!」




いちごのマカロンケーキ!

衝撃!!

明日の新聞の一面になってもいいくらい。


でも里垣くんも、自分があまりにも乙女なことを口に出していることをわかっているらしい。

耳を真っ赤にして少しだけ俯いてしまった。かわいい…




「だってあれ、すげぇ美味いんだよ」

「うんうん」

「だから、よろしく」

「わかった。待っててね」




拗ねた子供のように、ぼそぼそと話す彼がとっても愛おしく思えて。

私はケーキ屋さんへ走り出していた。



ああ。

こういうの、パシりっていうのか。




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