03




里垣くんの中では、私は里垣くんを好きだということになっているらしい。

そういえば今までにも「俺のこと見すぎ」だとか「俺のこと好きになったのか」だとか、何度も言われてきたことを思い出す。

いやまぁ…間違ってはないけど。




「違うよぉ。たまたまだって…」




とりあえず、否定しておく。

だけど、「好き」が違うのか「覗き」が違うのか、曖昧な返事になってしまった。


すると里垣くんは、ふんと鼻で笑った。




「冗談だよ。真っ向から否定してくんな」




なんだ、冗談か…。

でもこちらも、「好き」が冗談なのか「覗き」が冗談なのか、曖昧。

まぁ彼にとっては全てがジョークなのだろう。…ジョークがブラックすぎる。


私がどうしようもなくて立ち尽くしていると、里垣くんが手招き。

この人の中には「自らが行く」という思考が存在しないんだろう。

いつもどこでも、誰かを自分のもとに呼び寄せているイメージが…。


私が階段を降りて彼のところへ行くと、突然里垣くんは私の肩をがっしりと掴んだ。

思わずびくりと体がこわばる。




「おい。罰として、金出せ」

「は…?」




きょっ…恐喝…!!!!



お願いします。なんの罰なのか教えてください。

でもそんなことこの目が怖すぎて、聞けない…。




「ケーキおごって」

「は…?」

「は?じゃねぇよ。1回で理解しろ」

「ケーキって…」




何言い出すんだこの人。

でも次の瞬間、里垣くんはその怖い目を柔らかく細めた。




「俺ね、ケーキ大好きなの」

「へ、へぇ…」

「今すげぇケーキの気分だから、罰としておごって」




だから何の罰…!?

その前にケーキの気分ってなに…!




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