02


誰もいないはずの、放課後の学校。


…里垣くんが私と同じクラスの女子に告白されているところに遭遇してしまったのだ。

私は何をしていたかというと、たまたま廊下で出会った茶道部の先生と話しこんでしまって、そのままお茶とお菓子をいただいていた。


体が小さくてよかった、とこういうときに改めて思う。

私は体をこれでもかというくらいに縮こめて、里垣くんに気付かれないように身をひそめる。

ぺたんぺたんという足音が聞こえなくなって、少し後に女の子の足音もどこかへ消えた。




「…ふぅ」




丸めた体を少し伸ばす。バレなくてよかった。


‥里垣くんは、あんなふうに女の子を手痛くふるのか。

きっと悪気があるわけではなくて、思ったことを思ったままに言っているだけなんだろうけれど。あれじゃあまりにも女の子がかわいそうだった。


私も告白なんてした日には、あんなふうにポイっとあしらわれてしまうに違いない。

この気持ちは封印しようと、改めて心に誓った。里垣くんファンの女子も怖いしね。




…さて帰ろうと階段から立ち上がった時、全身から血の気が引いたのがわかった。




「お前、いつから居た」




私が隠れていた階段の下に、里垣くんが立っていたのだ。

まるで私が隠れていたことをずっとわかっていて、スタンバイしていたかのように。


ゆっくりゆっくり首をそちらへ向けると、明らかに不機嫌そうな里垣くんの顔が目に飛び込む。

とりあえずへらっとしておいたが、彼は1ナノも表情を変えずに私をじっと見つめて……いや、睨んでいた。




「覗き見?」

「いや…そんなわけ、」

「いくら俺が好きだからって、お前どんだけ悪趣味だよ」




…いつ私がアナタを好きだと言いました?



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