06



「清香ぁ」



帰り支度をしていたら、今日机に集まって来たみんなが私を取り囲んだ。

なに?と尋ねると、一緒に帰ろうだって。


きっと里垣くんや遠藤くんのことを根掘り葉掘り聞き出したいんだろう。

私にそんな里垣遠藤ネタ、ないんですけど。




「ごめん、今から先生に頼まれごとされてて…」

「えー?本当?」




疑われている…。もちろん嘘だけど。

へにゃんと笑って、時間かかるから今日はごめん。とだけ言うと、みんなは「じゃあまた明日ね」と帰って行った。

明日も纏わりつかれるのか…めんどい!


とりあえず、誰もいなくなった教室でぼけーっとする。

宿題でもやろうかなぁ。





「お。竹下じゃね?」




ふと、廊下から声がした。

目を向けると、そこには紛れもない里垣くんが立っていた。

制服をだらしなく着崩して、教室を覗きこんでいる。




「なにやってんだよ」

「ぼけーっとしてる」

「は?馬鹿かお前」




あぁ…馬鹿に馬鹿って言われた。ふんって笑って。

でもやっぱり、どの角度からどう見たってかっこいい。


私がへらへら相槌を打っていたら、里垣くんが手招きをした。

行かないと殺されそうだから、大人しく席を立つと、彼は怒鳴るように「馬鹿!荷物も持ってこい」と言って眉間にしわを寄せた。

従っても怒鳴られるって…。




「帰るぞ」

「え?」

「どうせなんにもしてねぇんだろ。帰ろ」

「え?え!」

「うっせーなお前」




帰ろうって…一緒に!?

状況が理解できないままおたおたしていたら、彼は私を置いてぺたんぺたんと歩き始めた。




「おい。置いてくぞ」




やはり一緒に帰るということらしい。

誰にも見られてないよね、と一度きょろきょろしてみてから、彼の背中を追った。





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