05
「たーけーしーたー」
放課後。
暴君が謎な間延び声で私を呼んだ。
目立つ……!!!
「はい!はい!なんでしょう!」
「教科書さんきゅー」
「あ!おい由和!お前おせぇんだよ。英語とっくに終わったし」
「あぁ?」
おおっと…!出て来なくていいのに遠藤くんが登場。
周りの目が気になりすぎて、そわそわする。
教科書が返ってこなかったことなんて、どうだっていい。無事遠藤くんが借りてくれたわけだし。
私はただただ、この場を早く去りたかった。…それなのに。
「竹下のもんは俺のもんだから」
暴君が原爆を落としやがった。
なにその古典的かつハンパないジャイアニズムは…!
里垣くんの言葉は、明らかに教室中に聞こえていた。背後で女子がざわめくのがわかる。
私が口をぱくばくさせていると、里垣くんはふん、と笑った。
「ってことで、覚えといて」
暴君は帰る。嵐が去っていく。
呆然としている私の横で、遠藤くんが深くため息をついた。
「ちなみに、俺の物もあいつの物らしいから、気にすんな竹下」
…あぁ、そういうこと。
私が特別とかではなく、お前のもんは俺のもんってやつですか。
ドラえもんが好きなんでしょうか?里垣くんは。
里垣くんと話せるのは嬉しいけど。
このままじゃ、どんどんクラスに居にくくなる。
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