03
……困った。
教科書が返ってこない。
里垣くんは教科書を返してくれないまま、体育の授業に行ってしまったらしい。
次、英語なのに…。
「竹下。由和から英語返ってきた?」
「……きません」
「やっぱ?本当あいつ適当だな。締めとくね、1回」
「しっ、しめっ…!いやいや!大丈夫ですそんな!」
締められるなんて…!
このグループは教科書ひとつぐらいのことで締め上げ合うのか…!末恐ろしい!
私があまりにもビビっていると、遠藤くんがぷぷっと吹き出して笑った。
「冗談だよ。じゃあ俺が誰かに借りて来るから、待ってて」
「え、ありがとう!」
「いやいや。俺も借りないとだし。ついでだから」
遠藤くんは爽やかに笑うと、教室を出ていった。里垣くんとは正反対だ。
遠藤くんに彼女がいて、里垣くんに彼女がいないのが、なんとなくわかる気がする。
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