02
「遠藤も忘れたらしいから」
「あ、はい。どうぞ」
「ありがと」
教科書を差し出す。
きって私と里垣くん、端から見たら卑弥呼と町民みたいなんだろうな。卑弥呼サマに捧げ物渡すー…みたいな。
「あとお前さ、俺のこと見すぎだよ?」
踵を返したかと思ったら、里垣くんはくるっと振り向いてそんなことを言った。ものすごく上から私を見て、笑って。
この人どんだけ自意識過剰…!?
でも本当のことだから、なにも言えない。ただ顔が瞬時に赤くなったのがわかった。
「ま、いいけど。見られて減るもんじゃないし」
里垣くんは捨てぜりふを吐いて、その場を去る。うわばきをぺたんぺたん言わせながら。
一瞬教室が静まり返った。
恥ずかしすぎる…。なぜ彼は1年のときからこんなに私を辱めに合わせるんだろうか。目付けられてるのかな。
うーん……でも、かっこよかった。
私もかなりの重症患者らしい。
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