01
乙女心と乙女座の彼
2年になって、里垣くんとはクラスが離れた。
クラスが違っても、彼は相変わらずなにかしらやらかしているようで。私のクラスでもよく話題になっていた。
彼の親友の遠藤くんとはまた同じクラスになった。彼にはずっと同じ彼女さんがいるのにやっぱりモテていて、彼女さんが気の毒だなぁと思っていた。
でも、遠藤くんとクラスが同じことは、私にとってラッキーなことだった。
里垣くんが毎時間のように、休み時間に顔を出すからだ。
「おーい。にー」
「いち!」
遠藤くんは壱という名前だからなのか、里垣くんは彼をおちょくって「に」と呼んでいた。
里垣くんの、意地悪で愉しそうな声が今日も教室に響く。
今の私の耳は犬よりいいと思うのだ。
最近は、里垣くんの気配がうわばきの音だけでわかるようになったから。
「英語の教科書貸して」
「またかよ」
彼はよく遠藤くんに教科書を借りる。律儀に貸してあげる遠藤くんは、どこまでもいい人だ。
彼女さん幸せだろうなぁ。
「おい竹下!」
ぼーっと彼らを眺めていたら、突然里垣くんが私に怒声を浴びせた。
びくっと背筋が伸びる。
クラスが変わってから、話しかけられたのは初めてだったから。…私の名前覚えてたのか。
「な、なに?」
「英語の教科書貸せ」
…怖い。目がやばい。
なんでこの人、私にはそんなに強気で命令するんだろう。
すると里垣くんはずかずかと教室に入って来て、私の目の前に立った。
うわぁ‥近い。
久しぶりにこんなまじまじと顔見たなぁ。やっぱりカッコイイ、この人。
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