05
中庭の自販機で、彼がジュースを買ってやると申し出た。
とりあえず糖分がほしかった私は、甘いやつ。とだけ注文。
「はい」
「……これ」
「おしるこ」
「…信じらんない」
どこの世界に甘いジュース頼んでおしるこ買ってくる奴がいるの?
貧血の時のおしるこなんか飲んだら逆に気分悪くなりそう…。
だけど思わず言ってしまった言葉に、ハッとしたけど時はすでに遅かった。
「俺の買って来たもんに文句あるの?」
「ないです…。すみません」
「敬語うぜーんだよ」
「おっと…ごめんなさい」
ふと見ると、彼は手に「いちごみるく」と書かれたピンク色のパックを持っていた。
まさかこの人がいちごみるくなんてかわいいものを…
と思った次の瞬間には、彼はパックにストローをさしてチュウチュウ吸い始めた。
里垣くんとピンクは、全然似合わない。
里垣くんといちごも、全然似合わない。
どちらかというと、ドリアンとかでしょこの人。
「おい。飲めよ」
「ああ、うん」
里垣くんのムッとした声に、急いで缶を開ける。
里垣くんイチオシのおしるこ。まずくはないけど、おいしくもなかった。
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