あるファミリーの地下室。
何年も使われておらず鉄壁は錆びて異臭、悪臭、ひび割れや蜘蛛の巣も見られる。
電気だって小さな豆電球一つ。窓はなくあるのは壁から延びている足枷と唯一外に繋がる鉄格子のみ。
そこに今、一人の少女が入っている。
「ねぇななし」
少女はこちらを見ない。聞こえていないのか、無視をしているのかは定かではない。
「…まぁ良いや。一つ伝えなきゃいけないことがあるんだ」
それは数日前におきた些細なこと。
「一人の男がね、俺のもとに来たんだ。名前は……ああディーノ、さんだっけな」
「…でぃーの」
「ははっこれには反応するか。ディーノさんはななしは何処だって五月蝿いんだよね。俺らの仲を裂こうとしても無駄なのに。大丈夫、ちゃんと追い返しておいたし」
「でぃーの、ディーノ、ディーノ…!助けて助けて助けて!」
ガシャン!!
俺は右手で鉄格子を叩く。
頭を抱え込み下を向いてあの男の名を呼ぶななしを見ながら、ゆっくり話す。
「…ここにはディーノさんは来ない。ねぇ喜んでよななし。これからはずーっと一緒だから、ね」
俺の表情は今満面の笑みだろう。
─ななしも嬉しいよね?
20110815
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Love is not escaped.