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One

『・・・アンタ、何でライトサイクルないの?』


格納庫に現れた、謎の黒髪の美少女。凛とした黒くて大きな瞳。まるで百合のような気品の高さだ。
しかし、服が異質である。黒にネオンカラーの青のライン。不思議な空間の匂いが辺りに立ちこめる。


「あー、失礼だが、名前は?何処から来たんだ?」
『アタシはグリッドにいたはずだが・・・』
《グリッドなんか、聞いたこと無いぜ?》『こいつは何だ!?クルーの兵器か!?』
《兵器じゃねぇ!!つか、クルーってなに!?》


・・・話が全く持って噛み合わない。


『ほかにプログラムは居ないのか?この世界はグリッドじゃないのか?』


なんだそりゃ、と辺りが静まりかえる中、
《もしかして、映画のトロン:レガシーじゃないのか?》


突然の発言に一斉に振り返る。声の主はオートボットの副官、ジャズだ。

『ーそこの兵器!!話が解るみたいだな!!ここはグリッドか!?』

《兵器って・・・いや、ちがうな。











アンタでいう、ユーザーの世界だ。》







『は、え、は




えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』






























『それは、兵器と呼んですまなかった。』「気にするなよ、そりゃあ、パニック起こすよ。」


この世界の事を教えてもらって一応、一段落している。オレンジジュースとかいうものを飲んでいるが、無機物なグリッドにはそんなもの無いが、これは美味しい。


『あ、アタシはエリアと言う。よろしくな、ユーザー。』
「所で、そのユーザーとは何だ?ゲームのやつか?」
『ゲーム・・・私たちの世界のゲームは殺し合いだ。人を処刑するのにこのライトサイクルを使う。』

さっ、と背中から出したディスクのようなもの。刃が無さそうだがどうやって人を処刑するのだろうか。
サイドスワイプはさっき言い争いになったが、なんとか打ち解けあってる。


「人を殺すのか・・・」
『ジャズ、残念だがグリッドではそうするしか生き残れない。弱いモノは滅びるしかない。
さて、スワイプが訊いた質問の解だが、ユーザーとは人間を指している。それに対して、グリッドに存在する者をプログラムと呼ぶんだ。アタシなんかだな。』


ディスクからは映像が流れる。その映像は、バイクを使いこなし彼女が持っているようなディスクで攻撃する男と、オレンジのラインのプログラム。

『これが"ライトサイクル・ゲーム"。

・・・こいつはグリッドに巻き込まれたはぐれプログラムだがな。』
「はぐれプログラムって・・・」
『レノックス、解るか?』


少し、挑発的な声。地味に下に見て、鼻で笑っている。


「・・・ユーザーってことか?」
『へぇ、なかなかやるじゃない。』


口笛をひゅう、と鳴らした。レノックス自身も、まさか当たるとは思ってはいなかったようで驚愕している。


「おい、プログラム。そこに何故ユーザーがいるんだ。駄目なんだろ。」
『ユーザーが、現実世界にある、グリッドのポータルを開けてしまったの。物質電子変換装置を起動してね、』


そういえば、アタシはここに来た理由、何かわかった?と、レノックスに問う。もしかしたら、グリッドに戻れるかも知れない。そう、淡い期待を膨らませる。しかし、物質電子変換装置が無ければ・・・。


《おい!!盗聴されているぞ!》
「ディセプティコンだ!!やれ!!」

突然、アイアンハイドが武器をちゃっ、と構えた。その先には、小型のロボット。しかし、オプティマスと違って、目が赤い。ディセプティコンという、敵らしい。

『あら、盗聴とは、随分汚いことするのね。それに、格納庫めちゃくちゃになるわ。』
「うわ・・・始末書書かなきゃいけねー。」


頭を抱えるレノックス。ディセプティコンを倒せても、後に残るは始末、処理、格納庫の再築。只でさえ、大佐と言う地位でも忙しいのに余計に世話を焼かせる。


『・・・わかったわ。一応、殺さなかった借りもあるし、コンピューターを壊した謝罪を込めてアタシがやるわ。





―――――――皆退いて。』


鋭い目つきで、睨んできた彼女を見て、飛びかかろうとしていたバンブルビーやサイドスワイプは一歩引いて見守る。ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。武器をしまう音も、聞こえた、


《はっ、虫けらがディセプティコンに刃向かうつもりか!?何もできない癖に!!》


『確かに、ユーザーはプログラムより遅れているから、虫けらには代わりはないわ。
だけど覚えておきなさい。

ユーザーは、生きるも死ぬも、自由なの。光を浴びられるのが、当たり前じゃない。そんなセカイを、ディなんちゃらが乗っ取ろうなんて











100万年、早いのよ。』


そこからはスローモーションのようだった。
彼女がライトサイクルを投げると、大きい放物線を描きし、小型のディセプティコンを裂いた。そして裂かれた半分で襲いかかったディセプティコンを戻ってきた、ライトサイクルで真ん中から漏れる青い部分を貫いた。


ピクリとも、しなくなったそれを見て、よく見た。


『・・・あったわ、盗聴器。送信されるまえに(ぐしゃ)つぶさなきゃ。』


目も当てられないそれに、彼女は只者じゃない。そう思い知らされるのであった。

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