01:日向の匂い



縁側に寝そべって庭の沈丁花を眺める。強くもなく、かと云って弱くもない香りが鼻を掠めた。天気も悪くない。

それにしても、隠れ家の癖に無駄に手入れが行き届いてやがる。

「ヅラぁ…、」
「ヅラじゃない、桂だ。」

お決まりのやり取りがいつまで経っても飽きないのは不思議だ。
というか、ここまでくると挨拶みたいなもんか。

同じく縁側に腰掛けて本を読んでいる桂の肩に流れ落ちた髪を一房掬い、口付ける。優しい感触。髪だけじゃ足りなくなる。欲しい。

「…なぁ、」
「なんだ、腹でも減ったか、」

仕方ないやつだな、お前は。云いながら頭を撫でてくる。多分、無意識。俺を年下扱いしてんじゃねぇよ。

「…高杉、」

俺の表情が変わったのに気付いたんだろう。撫でる手を止めて顔を覗き込んでくる。そういうところが甘ぇんだ、てめぇは。

「何かあんのか、」
「何がだ、」
「飯。」

ゆっくりと躰を起こしながら聞く。煙管に手を伸ばして、口元に運ぶ。

あまり吸うな。綺麗な顔をしかめて、こつん、頭を小突かれた。

「蕎麦ならあるぞ。」

ふわり。
優しい目で笑う。
この時の顔が、ムカつくほど綺麗で。

「蕎麦だけか、」
「蕎麦だけだな。」
「てめぇはもう少し肉付けた方がいいぜ、」

手首なんざ簡単に折れそうな程、細いしな。にやり、笑って返す。

手首を掴む。白くて、細い。掴んだ瞬間、小さく震える躰。

「…俺はそんなに細いか、」
「あァ、細ぇ。」
「お前とそう変わらん気がするが…、」
「冗談、」

手首をぐい、引っ張って躰を寄せる。

「わ、」

無防備に俺を覗き込んでくるからいけねぇんだ。そのまま深く口付けた。空いた手で躰を押し返してくる。無駄だと舌を使って云ってやりながら、口から溢れた唾液を指で掬った。

「…っ、んぅ、」

泣きそうな声。相手煽るしかねぇって、こいつは多分分かってない。
名残惜しく唇を離す。つ、と唾液が互いの口から糸をひいた。


「…やっぱ細ぇな、」

にやり。
笑いながら顔を覗き込む。一瞬、顔に赤が広がった。納得出来ないって顔。

「…っ、変わらんだろうっ、」
「細ぇ。」
「高杉こそ…、」
「シてる時のてめぇは壊したくなンだよ、そんなに細いとな。」







今度こそ顔に赤が広がった。


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ちゅーしてるふたりが書きたかっただけですごめんなさい(もうどうしようもない)
もっと色っぽく書けないかなぁ…

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