【アキさん】蔵馬夢小説 | ナノ
蔵馬夢6


「いってっきまーーーっす!」
「いってきます」

初家族の次は初登校!学校だって二度目ともなると楽しみだよねっ。
実は前の世界の記憶はもうほとんど無いんだけど。
それならそれで初めて気分を楽しむだけだわっ!

「ルナ、一応念を押しておくけど、『初登校』じゃあないからね。」
「わかってるわかってる!秀と一緒に入学して私服学校にセーラー服で通学してる従兄弟でしょ!」
「・・・じゃあその浮かれっぷりは何。」
「何って、青春は待ってはくれないんだよキミ!一度きりの学生生活を謳歌せずに何とする!」
「ルナは二度目だろ・・・」

 ごすっ。

「痛ッ・・・!何その・・・トンファー?」

余計な口を叩くコは愛武器で制裁!
歩きながらもすかさずスカートの下、太腿のベルトから取り出したトンファーを見て蔵馬が目を丸くしている。
取り出したのは右の一つだったけど、折角だから左のも取り出してヒュンヒュン回してカツンッと決めポーズ。

「私スピードはあるけど力が壊滅的に無いんだって。だから常備出来る武器。」

勿論、スカートで隠れるように持ち手の部分が折り畳める特別製なんだけど。

「スカートの下って・・・不二子ちゃん・・・?」
「いやそれは私も思ったんだけどね。」

殴られた頭を擦りながら呆れたように言う蔵馬にちょっとだけ同意する。

「しょーがないじゃんよ、咄嗟に取り出せる場所っていったら。鞄に入れとくわけにもいかないでしょー。」

ちゃんとスパッツも穿いてるし、大丈夫!とVサインする私に、「いいから仕舞え、誰かに見られる。」と蔵馬は冷たい。
渋々スカートの下に・・・

「・・・見たい?」
「見たくない。」

やっぱり冷たい!実はさっき殴った事を意外と根に持ってると見た。

あ、でも確かにちらほらと人の気配が・・・

「おはよー」
「はよーっス」
「あ、おはよー」

おおお朝の登校風景ッ!

「・・・ルナ。目、輝かせ過ぎ。」
「だからだね、こーいう何気ない朝の風景が後々っ」

冷静に突っ込む蔵馬に再度、青春の何たるかを説教しようとしたら、私にも「ルナおはよー」と女の子の声がかかった。
説教より青春!と即切り替えて満面の笑みで振り返る。

「おっはよッ・・・・・・」

そこには全然何気なくない光景があった。
顔色のよろしくない女子生徒の肩に乗っかるゾンビみたいな幽霊みたいな。

「・・・顔色、良くないね。」

思わず素で話していた。

「ん〜なんか昨夜から肩がこって・・・なんか憑いてんのかなー、ははっ」

元気なく笑いながら校門に向かうお嬢さん。
いや笑い事じゃないから。ほんとに憑いてるから。
思わず隣の蔵馬を見やれば軽く肩を竦めている。

「・・・よくある事なの?」
「まぁ・・・珍しくはない、かな。」
「放っといたらどうなる?」
「霊が生気を吸って、あの子とは反比例に元気になってくる。」
「うわ。嫌だソレ。」
「オレは、そこそこ元気になってある程度実体を持ってくれてからじゃないと対処出来ないからね。」

何とか出来るんだろう?と視線を送ってくる蔵馬に、思わず溜息をつく。
キラッキラの青春ライフは遠そうだ。

―――この世ならざるものよ 歪みし哀れなるものよ―――

小さく呪文―カオスワーズ―を唱え、周囲に紛れて歩きながら蔵馬の影に隠れて手を翳す。
呪文無しでも一応発動するけど、威力が極端に弱まるんだよね。

「メギド・フレア」

途端、女子生徒の足元から白い炎がゴゥッと湧き上がり、「ぐぎゃあぁぁぁぁぁ・・・」なんて外見を裏切らない気持ち悪い声を上げてゾンビもどきは消えていった。

「成仏してねー・・・」

あー・・・朝っぱらからヤなもん見た。
自然と疲れたような生温い笑顔を浮かべつつなんとなく空を見上げて言った私とは対照的に、憑かれていた女子生徒は「あれ?」と首を傾げて肩をぐるんぐるん回している。
お元気になったようで何よりです。

「一般人には見えない浄化の炎か・・・便利だな。」

隣で素直に感心している蔵馬。ちょっと自慢したくなる。

「でしょー!幻海ばーちゃんとこで色々試してね、地水火風とかの術もあるんだよ。」
「それは・・・敵に回したくないな。」

感心しつつも苦笑を浮かべる蔵馬にエッヘンと胸を張り、でもね、と続ける。

「この能力ってすっごく単純な弱点があって。」
「へぇ・・・教えて貰えるのか?」
「何かあった時に知っといて貰わないと。」

蔵馬だって、まだ妖力が不完全とはいえ今迄この地域を守ってきた身だ。霊界の見てない所では立派な戦力になる。

「ま、それはあるか。で?」
「口塞がれたらアウトなの。」
「・・・・・・は?」

思わず、といった体で蔵馬が間抜けな声を上げて立ち止まる。

「だから、呪文唱えられなかったら術も発動しないでしょ?手足縛られてもある程度は術で対処出来るけど、その上口塞がれたらなんにも出来ない。」

あ、体押さえられてもアウトだね、振り解く力無いから!と笑顔で付け加えると蔵馬は一転、呆れ顔になって再び歩き出した。

「それはまた・・・本当に単純な弱点だな。」
「でしょー!」
「笑い事じゃない。」

べしっ、と軽く頭をしばかれる。地味に痛い。

「そういうのは絶対バレないようにしないと。特にこれからは敵も増えてくるだろうし。『弱点がある』という事だけでも、敵に知られたら命に関わると思うんだ。」

思いっきり渋面で説教くらった。

「命、ねぇ・・・」

実は幻海ばーちゃんにも似たような事を言われてる。んだけど、まだいまいちピンときていない。
『場数踏んだら嫌でも身にしみてくるようになる』とも言われたから・・・まだまだひよこの私には理解が遠いのかな。

「ところでもう校門入るんだけど、こんな事話してていいの?」
「良くないね。続きは帰ってからだな。」

まだ説教あんのかーいっ!
まぁ・・・心配してくれてる、とでも思えば有難い、かな?
なんてったって戦闘と命がけの大先輩。・・・体術の稽古でもつけて貰おうかしら。
幻海ばーちゃんとこにも時間作って来いって言われてるけど、如何せん遠いからね・・・よし!

「行くぞ秀!」
「は?」

まだ渋面な蔵馬の手をとり、靴箱に向かって走り出す。

「ちょっ、ルナ!?」

まずは青春だ!!

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