【アキさん】蔵馬夢小説 | ナノ
蔵馬夢20



「あれ?ぼたん??」

座標のお宅に到着したら、何故かぼたんが出迎えてくれた。
・・・どうでもいいけど「うらめし」って凄い苗字だな。祟られそうだ。

「ルナちゃん!!うわぁぁぁん助かったよぉぉぉぅ!!」

何故かいきなり飛び付かれてわんわん泣き出された。
・・・私まだ何もしてないんだけど。

「ぼたんちゃん、お友達?」

家人と思われる綺麗なお姉さんが声をかけてくる。

「あ、初めまして、因幡」
「因幡ルナちゃんって言って、心霊医療のスペシャリストなんです!幽助君の怪我を治して貰う為に来て貰ったんです!」

おい。確かに怪我の治療は出来るけど、心霊医療のスペシャリストっていったら幻海ばーちゃんでしょうが。
私あそこまでの力、とてもじゃないけど持ってないよ!

私の言葉を遮って元気良く答えたぼたんに内心突っ込みまくる。

「あらそうなの!シンレイなんとかってのはよくわかんないけど、とにかく上がって上がって!」

納得しちゃうんだ・・・。
新米探偵君の血縁者だろう人がコレって、なんか色々心配になってきた・・・。

「怪我の治療って、もう一戦やらかしたの?」

実は綺麗なお姉さんが新米君の母親だと聞いてちょっとびっくりしつつ、玄関を上がりながらぼたんに問う。

「そうなんだよ、流石不良なだけあって喧嘩っ早くて・・・」
「・・・不良?」
「コエンマ様から聞いてないかい??」
「名前も何も。こっちもちょっと取り込んでてね。」

そりゃあ悪いねぇ、なんて言いながら説明してくれるぼたんに質問を挟みつつ粗方の事情を聞いた。

「幽助クン、ね・・・」

ベッドに横たわる彼に手を翳しながら、ぼたんの言葉を反芻する。
体力だけは無駄にありそうだな。これはリカバリィでいけるだろう。
呪を唱えて治療を始めた私に、今度はぼたんが聞いてくる。

「で、今回の事件についてはどこまで聞いてるんだい?」
「闇三大秘宝が盗まれて、1週間以内に取り返さないと厄介なオッサンが帰ってくる、ってとこまでかな。犯人の情報は?」
「妖怪が3匹。前科12犯の剛鬼以外は俗称しかわからないんだけど、飛影と蔵馬って言ってね、」

思わず治療の手が止まった。

「ひえい、と・・・くら、ま・・・?」
「知ってるのかい!?」

どうして、なんてそんなの。
飛影は痺れ切らしちゃったかな。降魔の剣で人海戦術?そんな事で雪菜ちゃんが見つかるなら苦労はしないってわかってる癖に。
蔵馬は・・・やっぱ鏡、だろうな・・・。病院帰りに「思い出した事がある」って言ってたの、その秘宝の事?
盗賊だったんだもんね、宝と名の付くものは大抵把握してるんでしょう。
・・・なら、願いを叶える対価が何かも知ってる筈だ。
わかってる。蔵馬が母さんの事どれだけ愛してるかなんて。途中参加の私には及びもつかない事くらい。人として生まれた時から、なんだもんね。
でもなんで。私だって母さんの事が大好きだって蔵馬だって知ってるじゃない。なんで相談の一つもしてくれなかったの。
霊界と繋がってるから?霊界の事は、探偵やってあげてるんだから最大限利用しろって言ったじゃない。
私が霊界と、蔵馬や母さんを天秤にかけた時、どっちに傾くかもわからなかったの?
蔵馬の馬鹿。ほんと抜けてる。ほんと―――

「ルナ、ちゃん・・・?」

ぼたんの呼びかけでハッとした。

「なんで泣いてるんだい・・・?」

ああ、私は泣いてたのか。言われるまで気付かなかった。
止まっていた手で顔を拭う。

「ごめん、母さんがね。余命1ヶ月無いんだ。今日も見舞いに行って来たところでさ。なんか急に思い出しちゃって。」

ぼたんが目を見開いた。

「気休めに呪はかけてるんだけど、ほんと気休めにしかならなくって。似たような治療してたから思い出したのかな?」

これでぼたんは誤魔化されてくれる。彼女は本当に良い子だから。
罪悪感を感じないと言ったら嘘になるけれど、今の私はそれどころじゃなかった。
簡単なリカバリィですら手が震えそうになる。
誰も居ない所で大声で思いっきり泣き叫びたい気分だった。

「ごめんよ、そんな大変な時に・・・」

案の定ぼたんがしょぼくれる。

「ぼたんが謝る事じゃないでしょ!ごめん、治療再開させるね。」

再び呪を唱えながらぼたんににっこり笑ってみせる。
ぼたんは眉をハの字にしたまま何も言えないようだった。

「リカバリィ・・・で、この怪我は誰と戦ったの?」

呪文を発動させながら問いかける。
震えそうになる声を内心で叱咤して何とか平常に保っていた。

「剛鬼だよ。やられっぱなしで全く勝機は見出せなかったけど・・・」

少し、ホッとする。
蔵馬は霊界のハンターといえど極力戦闘を避けるだろうし、飛影と戦っていたら十中八九殺されていただろう。
わかってはいても、事実として聞かされるとやはり一先ずの安心感は得られるものだ。

「ルナちゃん、この任務、幽助の代わりにってわけには・・・」
「駄目よ。本来任されたのは彼でしょう?回復とか、よっぽど本気で殺されそうになった時のサポートくらいはするけれど・・・基本的に私は関知しないわ。」

半分嘘だけど。
蔵馬に関しては大いに手を出させて貰うつもりだ。

「だよねぇ・・・ルナちゃんもお母さんの事で大変なんだしねぇ・・・でもま、サポートだけでも助かるさね!」
「・・・ごめんね。」

色んな意味で。

「けど人は死線を潜って強くなるもんよ、特に男の子なんだし。こんな任務も出来ないようなら霊界探偵なんて務まらないわ。」

務まってくれないと私も困るから言ってるのよ、と続けてにっこり微笑む。

「最悪死ななきゃ、瀕死でも治してあげるから。」

ぼたんの顔が引き攣った笑みになった。



**********



昨夜は浦飯宅で厄介になり、目を覚ました幽助と軽く自己紹介をしてから私は学校に来ていた。
無いとは思うが、蔵馬を探す為だ。
クラス担任が教壇に立って朝の挨拶をする。

「えー今日の欠席者は連絡の来ている南野だけだな。」

・・・やっぱり。
そこまで短い付き合いじゃあない。私が蔵馬の考えを読めるように、お互いの考えている事など筒抜けなのだろう。
最悪、鏡を使うまで私の前に姿を現さない可能性もある。・・・そこまで薄情だとは思いたくないけれど。
放課後、最早日課となっている病院に向かう。

「母さんただいまー。」
「おかえりなさい、ルナ。」
「あ、寝たまんまで良いってば!」

最近はめっきり弱って、眠っている事が多くなった母さん。
・・・この姿を見たら、確かに鏡に縋りたくもなる、か・・・。

「本当、秀一と同じ事言うんだから・・・」

苦笑した母さんに・・・って!

「秀来たの!?今日??」
「毎日来てくれてるわよ?そういえば最近時間帯がバラバラだけれど・・・もしかして喧嘩でもしたの・・・?」
「しっ、してないしてない!なんか秀、最近友達が出来たみたいで!」

心配げな母さんを誤魔化すのに思わず口から出任せを言ってしまったが、なるほど。私だけを徹底的に避けている、と・・・いい度胸してんじゃないッ・・・!
段々腹立って来た。報いはきっちり受けて貰うんだから!
いつものように母さんに呪で眠って貰ってリザレクションをかけ、一度家に戻った。
・・・1日1回程度帰ってる気配はあるんだけどな、とスポーツドリンクを飲みながらなんとなく家の中を見渡す。

―――この家、こんなに広かったっけ。

妙な感傷が湧いてきてしまったので振り払うようにぶんぶん頭を振り、幽助の家へと向かった。

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