モーターホームに戻ったついでにエリカは武器の手入れをしていた。魔具に近い閻魔刀・レプリカは普通の刀とは違い、頻繁に手入れする必要はないのだが、ここ数時間酷使し続けていたのでやろうと決めた。
鈍く光る刀身を磨いているとネロが近づいてくる。
「お前、それいつもどこにしまってんだ?さっきまで持ってなかっ──」
「それ!エリカが開発したのか!?見せてくれよ!」
ネロのセリフをニコが遮る。何ならネロの身体まで押し退けていた。瞳を輝かせているニコに「どうぞ」と差し出す。おっかなびっくりな調子でニコは刀を受け取ると、興味深そうに眺め回していた。
「これ、閻魔刀か?……にしては前見たときと雰囲気が違うな」
武器職人だけあって、ニコはすぐに偽物だと気づいたようだ。
「勘がいいわね。それはレプリカなの。地獄門を開けるために造ったのだけれど……本物のようにはいかなくて。作品としては没なんだけど勿体無いから使っているの」
「没!?これでか!?」
「一番必要な力が再現出来なかったからね」
今から思えば再現出来なくて良かった。もし本物と遜色ない刀が出来ていたら、エリカはもっと後悔していただろう。
「でもまあ、それ以外は再現できてるのよ。私は魔力がないから使えないけれど、幻影刀も発動可能だしね」
本当ならエリカが使うよりも魔力のある人間が使う方が宝の持ち腐れにならなかったのだろうが、閻魔刀・レプリカの開発は教団内でも最重要機密事項だったため、使い手を探せないまま廃棄処分に回されてしまった。棄てるくらいならば私が、とアグナスに許可をとり、貰い受けたのだ。
苦笑いを浮かべながら、刀を受け取り鞘へと戻すとそのまま空間へと消した。手入れ道具を片付けようとすると、ニコがぽつりと一言。
「い、今のは、何だ……?」
何もない空間を凝視し、指差している。
「ん?あぁ、これ?」
空間を歪ませて、刀の柄を覗かせるとニコだけでなくネロまでもがこくこくと頷いていた。
「これは悪魔が魔界から出入りする時のゲートを応用した技術。っていっても、魔界に繋がってる訳でもないし、大きさも小さいから細い物しか取り出せないんだけどね」
あははと笑って、ゲートを消す。もう少し大きなゲートができれば、人も通れるワープゾーンなんて夢の技術が誕生したのだが現実はそう上手くいかない。自分の技術不足が悩ましい。
((エリカって地味に凄い発明してるよな……))
エリカの落胆を他所に、ニコとネロ、二人の心が珍しく一致した。
技術力は如何に