the serpent* その悪魔


天界の建物は殆どが白で構成されている。ラファエルとクロウが部屋を出るとドアの前に準天使の1人であるフェリートが立っていた。


「ラファエル様、おはようございます」


天使なだけあってとても秀た顔立ちをしているが、人間にして16歳ほどの年齢に見える姿だ。
ちなみに、ラファエルとクロウはどちらも20代後半の容姿だ。

「本日も華美なる姿を拝見する事が出来て光栄です」

「おはよう、今日も神の光が美しい朝ですね」


ラファエルは、フェリートへまさしく天使の微笑みで挨拶を返す。
大天使でもあるラファエルには、準天使が1人ついている。ここ数年は、準天使の中でもトップクラスの優秀さを誇るフェリートがその役目を担っていた。
そしてフェリートもその役目にプライドを持ち、ラファエルに仕えるために勉学やその他諸々を邁進していた。

しかし、ラファエルといると必ず目に付く忌まわしい黒い悪魔 アスモデウス。

なるべく見ないようしても、この白い世界ではその漆黒の髪色は嫌でても目に付いてしまう。
天使も悪魔も普段は翼を広げていない。
このまま地上に降りても美しい人間に見えるだろう。しかし、アスモデウスの存在がラファエルの隣にいつもいるのはとても解せなかった。


クロウは外の光から目を逸らしていた。何年いても悪魔の体にここ光は合わない。

前を並んで歩くラファエルとフェリートの後ろを歩く。
クロウはこの姿をここ数年毎日見てきた。
天使の並ぶ姿は美しい。
体から清らかなオーラが出ている。
しかし、今日のフェリートのオーラはいつもより少しくすんでいるように見えた。
よく見なければ分からないものだが、ここ何年もオーラを観察してきたクロウには気づくことができる。

もうすぐ準天使達が集まる祈りの間についてしまう。
少しでも顔を見ることが出来れば、何か分かるかもしれない。
クロウはフェリートの腕を後ろから引っ張った。
もちろん、天使の体に触れるのはラファエル以外ではとても久しぶりの事だ。


「……なっ!」


フェリートが声にならない声をあげる。
綺麗な顔が驚愕と恐れの色に変わる。
やはり、フェリートの瞳の奥にあるオーラの色が何か違う。
天使のフェリートから感じる《悪魔》の気配。


「アスモデウス……っ」


フェリートが自身の胸に手を入れ、聖水が入った容器を取り出す。
それを見た、ラファエルはすかさずクロウの前に出て庇おうとした。


「……っ!」


しかし少しだけ間に合わなかった。
頭から聖水を微量にかぶってしまう。
頭と目がチカチカクラクラする、悪魔には合わない神聖な香り。
しかし、かぶったのは少しのためそれ程のダメージは無かった。


「クロウ、説明しなさい」


ラファエルに他人行儀な台詞を吐かれる。ついさっき、クロウをかばったラファエルだがそれはなかった事にするらしい。確かに天使の連中にラファエルとクロウの関係がバレるのは何かと都合が悪かった。






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