sacred secret 神聖な秘密
神々しい金色の髪、透き通るようなアイスブルーの瞳、癒しの守護天使であり、大天使の一人でもあるラファエル。
漆黒の髪に血のように赤い瞳、天界では誰もから嫌われている色欲を司る悪魔、アスモデウス。
ラファエルは、その昔ある人間の女性に憑依している悪魔を祓った。
その悪魔の名がアスモデウスである。
そして、その悪魔を滅せずに天界に連れ帰り自分の側仕えとした。
悪魔にさえも慈悲深い行動に、天界は更にラファエルに対して敬いの気持ちが高まった。
幼い天使達は、誰もがラファエルの様な天使になれるよう目指した。
そしていつも側いる黒い悪魔を忌まわしいものとしていた。
そんな2人の朝はいつも通りはじまる。
暖かい日差しが窓から注がれている。
天界の天気はだいたいが快晴だが、湧き上がる水が枯れる事は決してない。
「クロウ、朝だ。いい加減起きろ」
低く美しく声。
ラファエルの神に捧げる歌は、誰もが聞き惚れるものである。
クロウ、と呼ぶ相手は悪魔 アスモデウスのことである。
ラファエルが付けた名であり、その名で呼ぶ者はラファエルしかいない。
1人で寝るには大きすぎるベッドに、クロウは寝ていた。
白いシーツに濡れているようにさえ見える黒い髪が映えている。
小さく唸りながら瞼が上がり、真っ赤な瞳がうろうろとさまよった後、ラファエルを見る。
「ねむ……。なに、もう出掛けるの」
クロウは起き上がりその場で胡座をかいた。
寝癖がついている髪をラファエルが優しく撫で付ける。
「ああ、今日は准天使たちへの指導の日だ」
「ふーん、じゃあ着替えだけする」
その場でどんどん服を脱ぎ着替えていく。
脱いだ服はラファエルが受け取り籠へといれる。所定の場所へ置いておけば、それを准天使が片付け、綺麗になったものが戻ってくる仕組みだ。
クロウが着替え終わると襟元をラファエルが正しく直す。
そして手をクロウの顔の前に翳し、小さな声で唱える。
「主よ賛美せよ」
温かな光がラファエルの手から溢れクロウの体に注がれる。
水が苦手とするクロウのための浄化だ。
これで顔はもちろん体も洗わなくて済む。
「ラフィ」
クロウがラファエルを呼ぶ声。
ラファエルの事を愛称で呼ぶ者は、この天界でも限られている。
クロウはラファエルの頬にキスを落とす。
どう見ても主従関係には見えない。
傍から見たら恋人同士である。
実際に2人は愛し合っている者同士であった。
しかし、それはここだけの、この部屋だけの秘密の話。
ラファエルの後ろにクロウが続き、リビングとなる場所を抜けて廊下に出る。
側仕えの役目を今日もするのである。
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