09.甘い熱だけを残して


「先輩……?」

「なに」

至近距離にある先輩の顔を見つめる。
そこにあるのは、見慣れない優しい笑顔。


「好きです、先輩」

「知ってる」


また唇に暖かい感触。
なんでこんなにキスをしてくるのだろうか。
今まで、キスをしてきたことなんてないのに。


「……っ、どんな心境の変化ですか」


2ヶ月も俺のことを放っておいたくせに。
葛城先輩とは、仲良くにこにこと話してたくせに。


「おいおい、顔が怖いぞ。もう俺のこと殴るなよ」

「やっぱり嫌い」

「勝手にしろ。お前がどう思おうが、アキは俺のものにすることした」

「な、にそれ。自分勝手な」

「嬉しいくせに」


先輩がぎゅっと抱きしめてくる。


「先輩、まだ朝」

「……ごめんな」

「なにが」

「アキの事、放ったらかしにして。お前からは離れようと思っていたんだ。お互い最初はただの性欲解消だっただろ。でも回数を重ねるうちに、アキが俺のことを好いてくれていたのは気付いていた」

「うん」


先輩の顔は見えないが抱きしめられているので、真剣な声はすぐ近くから伝わってくる。


「俺もアキから離れられなかった。お前が笑う顔がかわいかったし、俺だけのものにしたかった。でもな、アキの将来を俺のせいで潰したくなかった」

「なにそれ、すごく自分勝手だ」

「ああ、俺のエゴだよ。だから謝っているだろ」


先輩がまた俺と視線を合わせて謝ってくる。その顔は本当にすまなそうにしていて、俺はこれ以上何もいえなくなってしまう。


「ずるい」

「だから、悪かったって」

「特別に許す」


本当は先輩が何をしたって俺は許してしまう。それを先輩はわかっている気がした。本当に狡くて、すべてを俺には見せてくれない人だ。


「抱かせろ」

「まだ朝なんだけど」

「朝はダメだなんてルールはねえよ」


それより以前に風紀委員長としてはどうなんだよ、と言い返せる台詞はたくさんあったが、俺も先輩に抱かれたかったから何も言わないことにした。

先輩は次々と自分の服を脱いで上半身裸になる。久しぶりに見る先輩の背中に指で触れた。


「俺を先輩のものにしてくれる?」

「ああ」

「先輩は?」

「俺もアキのものになるよ」

「返品しないからな」

「大事に長くつかってくれよ」


それはこっちのセリフだ。
俺も肌と肌で先輩に触れたくて、さっさと服を脱いだ。


「ん……、今日はたくさんキスするんだな」

「我慢はしない事にした」


首筋にキスをされ、先輩の手は俺の肌をまさぐり直ぐに乳首へとたどり着く。
久しぶりの感触にどうしようもなくなる。


「……っ……」

「ここ、1人でするときも触る?」

「……な、いっ……」

「ふーん、まあいいけど。これからは自分で慰める暇なくなるから、俺が充分可愛がってやるよ。……ほら、どう??」


先輩は話しながら、レロレロと先端を舌で押し潰してくる。反対側も手で休むことなく刺激される。


「は……あっ、ちひろ、そこはも、ういい」

「そんな事ないだろ。とんがってきたし硬くなってきてる。乳首もここも」


膝でぐいっと股間をおされ、ぐりぐりと刺激される。


「ああっ…、はっ」

「もっと舐めて欲しい?」


ぱくりと乳首を口の中にいれて、じゅっと勢いよく吸われる。


「ああんっ……!や、ああっ」


いつもよりずっと饒舌な先輩との久しぶりのセックスは気持ちよくて、はしたないと分かっていながら、感じる自分を我慢するとことは出来なかった。

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