8.時間は戻らない
いったい俺が寝てしまっていた間に何が起きたんだ。
席につき食事をとることにしたが、葉月はこちらをまだ心配そうな顔で見ている。
「葉月、」
だめだ…怖くて聞けねえ…。
ユッキーと何を話してたんだ。あいつ、いらないこと話してないだろうな!?
「どうしましたか?」
「あの、あのさ…」
勇気を出して…
「皆藤と何を話してたのかなーって……い、いや少し気になっただけだ」
ぐだぐだと言い訳を並べる。
すると葉月は、にっこりと笑いかけてきて言ったのだ。
「あなたのことですよ」
え…、
「俺!?いったい何を聞いたんだ」
「水無月とは、ただの仲のいい友だちであること。この学校に広がる噂は全くもって嘘なこと」
ああ、ユッキーは葉月に伝えてくれたのか。
本当に感謝の言葉しかでない。さっきは疑ってごめんなさい。
「ああ、そうか…そうなんだな。噂は否定しようにもタイミングがなくてな…」
「でも、水無月は皆藤のことを片思いしているとかは?皆藤は水無月の事を凄く気にしているようでした。お似合いだと思うよ」
う……その言葉はグサッとくる。
やっぱり葉月は俺のことは眼中にないんだよな。
「それはない。だって俺が好きなのは葉月だ」
「………え?」
「あ」
やべえ、俺今なんて言った。
好きって言ってたか?
いや、気の所為だよな?
葉月の顔をみると、ぽかんと珍しく口をあけている。
…やばい、まじでやばい。
気の所為じゃない。
穴があったらいれてくれ。
いやその穴をどうかブラジルまで掘ってくれ。
オレは今この瞬間からブラジルで暮らしていく。
どんどん顔に熱が集まってくるのがわかる。
穴に入る前に爆発する…!!
冗談で済ませる雰囲気ではない。
ああ、神様、仏様、葉月様、
時間を五分でいいから戻してくれ。
とりあえず俺はその場から逃走することにした。
「あ、生徒会顧問に呼ばれてるんだった」
丸わかりなウソを述べて俺はダッシュで寮へと逃げた。
ああ、もう、どうしよう。
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