20.弟のおもい
「ええ!?じゃあ、今回のことはお咎め無しな訳!?」
ユッキーはうんざりした声を出す。お人好し、と呟いているのが聞こえる。
「体調、本当に大丈夫ですか?飲まされたのはただの睡眠薬みたいだけど」
葉月の手がそっと俺の額に触れた。暖かい体温が伝わり、綺麗な顔が目の前にきてどうしようもない気持ちになる。
俺も触れたい、その顔や、手や、体に。
「ちょっと、二人とも自分たちの世界つくらないでくれる。……ええっと、風紀委員長さん、大丈夫ですか?なんか顔色悪いですけど」
ユッキーは、蓮の事が苦手なようだ。
もちろん、俺と蓮が双子な事も知らない。
蓮の様子がおかしい事はとっくに分かっている。
その理由も。
遺伝子は違えど、俺たちは双子なのだ。
お互いの気持ちは話さなくても分かることだってある。
「風紀委員長、あの約束は今日までな」
俺は蓮のそばにいって、手を顔にのばして頬の肉をぶにっと伸ばした。
すると、蓮がこちらをギッと睨んでくる。
「……なにすんだよ!!!!バカ!!!!もう知らねえよ!!!」
おお、俺にここまで言うとは成長したなあ。
相変わらず発言はアホっぽいけど。
「ごめん、ごめん。心配したよな?」
葉月もユッキーも、楓でさえもぽかーんとしてる。
普段は何処までもクールな風紀委員長だもんなあ。
ほぼ同じ位置にある頭をなでる。
何年も前に戻った気分だ。
「副会長と付き合ってんの?」
「はあ!?」
何を突然言い出すんだこいつは。
俺の誘拐未遂事件で悩んでたんじゃないのかよ。
そっちかよ。
「付き合ってねーよ……」
「じゃあ、遊ばれてんの?」
「いやいや、あそ」
「遊んでません」
そう言い切ったのは葉月だった。
振り返って葉月を見るとこちらを見て優しく微笑んでる。
えっと、それって……。
葉月を問い詰めようしたら、蓮に腕を引っ張られた。
「週末、俺の所泊まって」
「今週の?」
「うん、いいだろ?」
まあ、良いけど……。
「ダメです」
今度は後ろから葉月に手を引かれる。
「他の男の所に泊まるなんて許しません。風紀委員長と仲がいいとは思っていましたが、友達という感じではないですよね?いったいどういう関係なんですか」
葉月の顔が少し怖い。
「あー……、」
言い淀んでいると、蓮がきっぱり言い放った。
「凛は俺の兄さんだ!!!」
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