11.もっと好きになる


生徒会室へは早足で行かなければならないのに、足は動かずとろとろと歩いてしまう。
とりあえずは、明日の委員会に出す資料を作れば今日のところは合格点である。

いつもは葉月に会えるから、生徒会室に入るこのドアを開けるのは楽しみだった。
今の気持ちは……

俺はドアを開けて生徒会室に入った。


「………いてっ!!」

「っ……!!」


頭が思い切りぶつかった。
かなり勢いよく頭を打ったので涙がにじむ。
こういう不意打ちってマジで痛い。

しかし、頭の半分ではわかっている。
俺がぶつかった相手のこと。
目の前で頭を抑えて下をむいている。

ああ、そりゃあ葉月も痛いよな。
綺麗な顔に傷がついたらどうしよう。
俺が一生をかけて責任を……って妄想をしている場合じゃない。


「葉月、悪かった。大丈夫か?」

「……はい、確認せず開けてしまい申し訳ありませんでした」


うう、かなり痛そうにしているな、本当にごめん。

葉月の顔が上がってこちらを向く。

良かった、顔に傷はついていないようだ。

目が合うと、葉月の手がこちらにのびてきて、俺の目尻に指が触れる。


「あなたを泣かせたくはない、と思う。この気持ちは何でしょうか」


こちらをじっと見つめてくるグレーの瞳。
俺は催眠術にでもかかったかのように、ぼーっとみつめてしまう。


「水無月、あなたのさっきの告白、考えさせてもらっても良いですか?」

「え……!?あ、うん、もちろん」


しどろもどろに返事をする。
葉月は、告白の事を真剣に受け止めてしかも考えてくれるらしい。

こちらを見つめている葉月にどんどん顔が熱くなってくるのが分かる。


「水無月、かわいいね」

「はっ!?お前何言ってるんだ、もしかしてさっき頭を打ってどこかおかしくなったんじゃ……!!」

「あはは、こんなかわいい水無月は誰にも見せたくないけどね」

「……!!!!」

「職員室に行ってきます。明日の委員会の書類下書きだけ軽くしておいたから見ておいてくれますか?」


にこっと優しく笑って、しかも俺の頭をさらりと撫でてから去っていった。

葉月、天然のたらしなのか!?


なんなんだ……!!!


これじゃあ、あいつの事もっと好きになってしまうじゃないか。



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