10.家庭環境


俺達は普通の兄弟…のはずだった。

しかし、数分遅く産まれた弟の蓮が極度のブラコンになってしまったのだ。
3歳にして兄から離れず、何でも兄の言う通りに行動した。
たとえ白いものでも俺が黒と言えば、蓮にとっては黒だ。

俺がいないと何もできないのは、小学校に入る前の年長まで続いていた。
両親は、俺と蓮を違う学校にいれることにしたのだ。賢明な判断である。

中等部からは寮に入ったので、私生活でも蓮に会わない生活が始まった。
俺は葉月が好きになってからは、正直蓮の事は頭に殆どなかった。
元気でやっているだろう、と思っていたのだ。

しかしある日の親父からの電話で衝撃をうけた。
蓮がグレてしまったのだ。
夜は家に帰ってこずフラフラしている、と困り果てた親の声に俺は提案してしまったのだ。

俺のいる学校に転入させろ、と。

高校から入ってきた蓮は瞬く間に風紀委員長まで上り詰めた。

俺は真剣な目でこちらを見つめてくる弟に説明した。しかし一般的に見れば睨んでいるように見えるだろう。


「つまり、あの転入生は色々嘘をついていたってことだよ」


蓮はがっくりと項垂れる。


「そんな……兄さんは倒れるまで1人で仕事してたのに、あいつ、ころ」

「おいやめろよ。冗談でもそういうこと言うな」

「俺なんで兄さんと他人のふりしようなんて言っちゃったんだ」


俺たちが学校で双子だと知られていないのは、蓮が言い出したことが原因だった。


『俺たち二人だけの秘密だ!他人のフリしよう!』


蓮は本当にバカだ。

ただ俺もそっちの方が都合がよかったし賛成したのだ。
学校内でもうろうろついて来られたらさすがにうざい。

それに風紀委員長になった蓮はそれなりに仕事をまっとうしているようだ。
委員にも信頼されている。
これで大人になってからは1人で生活していけるだろう。
ただし、ブラコンはなおってはいないけどな。


「転入生の件、お前に任せてもいいな?」

「兄さんの頼みならなんだって聞く!」


こらこら、目を輝かせて言うセリフじゃないぞ。

相談室を出ると風紀室にいた数人の目線が一気にこちらに向いた。
いやいや、そんなに怯えた目をするな。
俺達は殴り合いの喧嘩なんてしていないぞ。

蓮が俺と話すとボロがでるから、あんまり話さないようにしているだけなのに、いつの間にか犬猿の仲だと思われるようになってしまったのだ。


「じゃ、頼んだぞ。風紀委員長」

「了解した」


俺たちが喋る度に風紀委員の肩がビクビク震える。
お前ら、しっかりしろ。

これからは葉月がいるかもしれない生徒会室に行かなければならない。

はあ、とおれは大きくため息をついてしまったのだった。


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