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 祭りの時間 沖田

水槽の中で優雅に泳ぐ金魚たちを見つめ続けて、何分が経過しただろうか。




「ねぇ、まだ掬わないの?」




「だって、タイミングが掴めないの!」




せっかくのお祭りだもの。お祭りらしいことをしたかった。

選んだのは、金魚すくい。実を言うと金魚すくいをやるのは、数年ぶりで。得意だった記憶もない。




だから今こうして、その瞬間を定めるのに相当の時間がかかってる。




「そういう総司くんは、得意なの?」




「そうだね、君はだいぶタイミング逃してると思うよ。」




総司くんは案外器用だから。絶対こういうの得意そう。きっとさっきからニヤニヤしてるのは、半分私を馬鹿にしているに違いない。




「じゃあ教えてよぉ…」




いいよ、そう言うと、総司くんが私の背後に被さった。後ろから手首を掴まれる。柔らかな髪の毛が、私の頬をくすぐった。




「ポイはこうやって構えて……」




総司くんの声が、耳元を掠める。いつもより奥まで届く。

なんだか五感の全てを総司くんに囚われたみたいで。




「金魚がきたら………」




掴まれた手首が、大きく引っ張られた。ぴしゃり、と水面が揺れる。

気付いたら手元のボールには、金魚が泳いでいた。




「ほら、とれた。」




その時の私は、もはやそれどころじゃなかった。




心臓は早く鼓動を刻み続けていた。



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