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 祭りの時間 斎藤

幼馴染のはじめくんと、近くの秋祭りに来た。

毎年の恒例行事だから、お互いを異性として意識し始めるようになってからも、変わらず出向いている。




「しかし、あんたもよく食べるな。」




人混みの中をゆっくり歩きながら、はじめくんはさりげなく私を庇ってくれている。




「はじめくんは、何も買わないで楽しめているの?」




抱えきれないくらいの食べ物を頬張りながら、私ははじめくんを見つめた。




「別に食べなくても、祭りは祭りだ。」







お祭りの定番といえば、綿あめ、かき氷、たこやき、焼きイカ、そしてチョコバナナ。これらを制覇しなくては、何をしに来たのだろうか。

そして今は、チョコバナナを制覇中だ。




「……食べて、みない?」




カラフルなチョコレートで彩られたバナナを差し出した。無理矢理、はじめくんに握らす。




仕方ないな、と言わんばかりの表情で、はじめくんはそれを口に運んだ。




「どお?美味しいでしょ?」




「……まあ、うまい、な。」




すぐにそれは私に戻された。




「あんまり、気に入らなかった?」




ぱくり、と一口。その時、私は気付いた。




(あ、間接キス……)




そう思ったのと同時に、はじめくんが呟いた。




「あんたが旨そうに食べていれば、俺はそれでいい。」




二口目のチョコバナナは、すごく甘かった。



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