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 ふたり

一緒に暮らそうの設定を引き継いでいます。




おんなじが、いいよね!


左之くんと一緒に暮らすことが決まった、二週間後の週末。
新しい二人の住まいを探しに、街に出た。
左之くんのマンションに転がり込む案も実を言うとあった。だけどやっぱり、二人で新しい住まいを見つけるのがいいよね。そういう話になった。

実家暮らしだった私は、そのことを親に伝えなくてないけなかった。

もう社会人なんだから好きにしなさい、そう両親は言ってくれたけど。それはきっと、数回しか会っていないけれど左之くんの人柄が、よく伝わっていたからだと思う。

彼はすごく、優しい人なんだって。



「どの駅周辺をご希望ですか?」

カウンター越しに、営業スマイル全開のお姉さんが聞いた。

お互い違う職場だから、なんとなく中間地点の場所に住もうって決めていたけど、思ったよりその調整は難航した。だからいっそ、不動産屋さんに聞いてみよう、と今に至る。
物件から攻めていくのもいい。交通アクセスはよっぽど不便じゃなければなんとでもなる。

「私達、職場が違うから、中間地点のこの駅あたりかな、と考えているんですけど……。」

「いくつかの候補周辺でいいところがあったら、そっちから決めようって話ているんだよな。」

左之くんの暖かな眼差しが、注がれる。うんっ、て返事をすればお姉さんが良いですねって言った。
急に照れ臭くなって、資料に目を戻した。







ひとまず今日見られる物件を数件めぐった。私達がいいな、と思ったのは今まで使ったことのない電車の沿線の地域のマンション。値段や大きさ、それにアクセスも悪くない。

その物件を見終えた頃には、お日様は沈みかけていた。

「ありす、早いけど飯食って帰らねぇか?」

「賛成!お腹すいたー。」

もしかしたら、俺達この辺りに住むかもしれないしな。左之くんが言った言葉に胸が高鳴った。

だけど初めての街は分からないことばかりで、何度も同じところを行ったりきたり。
結局お店を決めるのに、すごく時間がかかってしまった。慣れない所でやっていけるのか、正直不安になった。食事が運ばれてきたときはお互いクタクタで、黙り込んでしまう。

「……ちょっと、この街不安になってきたかも。」

「仕方ねぇだろ。今日初めての来たようなところなんだからよ。」

入ったお店は、チェーン店でなく、地元の人が営んでいるような居酒屋さん。
お通しとして出された、大根の煮物を一口運んだ。

「……おいしい!」

優しい、温かな味だった。なんとなくこの街の雰囲気みたいで、心安らいだ。

「……でも、なんか、上手くやっていけそうな気がしたかも。」

「どうした、急に?」

「ううん、ただそう思っただけ。」

左之くんの頭にハテナマークがついている。だけど、いい。左之くんとならやっていけそうな気がしたから。

「今日ね、ふと思ったの。私達、って言葉を使うたびに、一緒に暮らせるんだって。」

「俺とありす、で俺達、だもんな。」

そう、左之くんと私が出会って、私達になった。なんだか二人の人生が、ある時から重なっていくみたいで。


(これから、どうなるか分からないけど)



さりげなく箸を伸ばして、唐揚げをとる。
その箸が、左之くんの箸とぶつかった。

「あ、ごめん……。」

一瞬、視線が絡まった。









「これからよろしくね、左之くん。」



これから貴方とおんなじ、を増やしていきたいな。






end













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