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 一緒に暮らそう

ぬくもりと、セットがいいから。


日曜日の終わり、共に過ごせる時間の終わり。
宅配ピザのゴミがちゃぶ台に散乱しているのもお構いなく、テレビを見ながら談笑する。

彼とのデートはいつもこんな感じだ。
とくに何処かに出掛けるわけでもなく、ただどちらかの家でゴロゴロする。夕飯を食べて食休みしたら、どちらかが家に帰る。

すごく味気のないようだけど、実は別れ際はいつもツライ。
こうして最後の時間を過ごしてるときは、あと何時間後には一人だ、とかつい考えてしまう。

ふと、テレビに映っている映像が切り替わる。

「あっ、今の見てたのにぃ!」

リモコンをひらひらとさせる彼が、得意気に笑う。まるで私が猫じゃらしで遊ばれている猫のようだ。

「俺はこっちが見てぇんだよ!」

「だめ!さっきのクイズの答え気になる!」

速攻で奪い返しチャンネルを戻した。どうやら芸人が正解したらしく、盛り上がりをみせていた。肝心の正解は見逃したようだった。

「……今日、涼しいね。」

なんだか急に視聴意欲がなくなって、彼が見たがっていたチャンネルに変えた。
季節は夏から秋への変わり目で、なんともいえない湿度だけが、不快要素である。

「なんか羽織るか?あ、掛け布団でも膝にかけとけよ。」

そう言って彼は、乱雑なベットから掛け布団を引き寄せた。

「えっ、大丈夫だよ!上着、持ってきてあるから。」

「でもよ、風邪引くぜ?」

心配そうに見つめてくれる彼が、愛おしい。

「……帰りたく、なくなっちゃうから。」

彼の香りがする布団に包まったら、心地よ過ぎて帰れなくなる。
日曜日の終わりを意識してしまう。あ、あれだ。サザエさん症候群だ。

「よしっ、いい加減帰るね!」

テレビがひと段落したところで、勢いよく立ち上がった。明日からはまた仕事だ。
上着を羽織り、荷物をまとめる。携帯を充電させてもらっていたから、充電器を忘れてはいけない。
小さな玄関でパンプスを履き、扉に手をかけた、その時。

「なぁ、ありす。」

突然彼に呼び止められた。

「なぁに?左之くん。」

玄関の柱にもたれかかって腕をくむ彼の姿が、かっこよかった。





「一緒に暮らそう、ぜ。」




その言葉が耳に入ったとたん、私の顔が赤くなるのがわかった。
まだその意味を深読みするには早いかもしれないけれど、彼が私と共にいたい。そんな気持ちがストレートに伝わってきたから。

「……テレビ、もめるよ?」

「お前と一緒にいれるなら、大歓迎。」

何でも付き合ってやるよ、そう言った。さっきチャンネル勝手に変えたくせに。

だけど一緒にいたいのは、私も同じ。
履きかけた靴を脱ぎ捨て、彼に飛び込んだ。



「帰り道、さっそく合鍵つくりにいこーぜ。」




憂鬱な日曜の終わりは、今日で最後。






end





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