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 この冬の白さに 斎藤

厳重に包まれた紙を一枚ずつ剥がし、きれいに丸められた紙を取り出す。くるくる、と開けば小さな文字で今年の運勢が書き連ねてあった。




「ぎゃあああ!凶でちゃった!!」




なんとなく予想してたけど、まさか本当にここでくるとは思わなかった。

もう一度引くのも、おみくじの意味はない。それに一刻も早くこの人だかりから脱しなくてなはならない。

ひとまずショックを引きずりながらその場をあとにした。




「いたいた、はじめくん。おみくじ、どうだった?」




はじめくんの手元を覗き込んだ。

しっかりと握り締められたそれは、きちんと既に折り畳み直されていて文字は見ることができなかった。




「みーせーてっ!」




一瞬の隙をついて、はじめくんのおみくじを奪い取った。

彼に背を向けて、おみくじを開く。

するとそこには、「大吉」の文字があった。




「えっ、はじめくん大吉?!いいなぁ……私、今年はツイてないみたいだし……。」




病気に注意、待ち人は来ないし(実際待ち人なんていないんだけど)、探し物も見つからない。そして決めつけられたかのような口調で書かれた、私の運命。今進んでいる方向とまったく逆なんだけど。




「……そのおみくじ、あんたにやろう。」




いつの間にか、紙コップに並々注がれた甘酒をもってはじめくんが現れた。あれ、さっきまで一緒じゃなかったっけ。




「え、だめだよ。これは、はじめくんの運勢!私は正直に謙虚に生きることにしますぅ…」




急いではじめくんに、おみくじを返した。わざとらしく、彼の前に差し出す。だけどはじめくんは、受け取ろうとしなかった。




「もぉ……わかった、これ飲んだら返すからね?」




ずるずると音をたてて、甘酒を口にする。熱くてまだ飲めない、だけど冷えた身体が早急に暖かさを求めている。




「いや、そのおみくじはあんたが持っていてくれ。」




「だからっ、それじゃあ意味がないって。」




「いや、俺の運命はあんたと共にあるから、……あんたに持っていてほしい。」




はじめくんの言葉に慌てて、私は激しく咽せた。どうやら飲んだ甘酒が、正しくないところへ流れ込んだらしい。

そんな私を、はじめくんは心配そうにさすってくれた。クリスマスに私からプレゼントした手袋を、ちゃんとつけて。




「…それって、プロポーズ?」




「あ、いや。これは、だな…。」




「否定されても、悲しいんだけど?」




口元をハンカチで拭い、顔を赤らめているはじめくんを見た。

今度は逆に、はじめくんが慌てふためいている。

いや、私も半分冗談だったのだけど。こんな反応が返ってくるとは思わなかった。




「その、今の…はな。」




「今の、は?」




息を大きく吸って、その瞳に私の姿を映す。




「今年の予言、だ。覚悟しておくといい。」




どうやら私は、おみくじに書かれていない自分の運勢も知ってしまったようだった。





fin.



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