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 この冬の白さに 沖田

「…ははっ、どうする?このみかん。」




私と総司くんは、コタツの上に積み重なった大量のみかんを眺めた。




ことの始まりは、数時間前。

外は大雪でなにもできなかった私たちは、コタツの真ん中に置かれたみかんに目をつけた。

最近テレビで話題の、みかんの皮アート。スマホで調べれば作り方は簡単にヒットした。




「まあ僕は悔いはないよ。例えこのみかんを全部食べなくちゃいけないとしてもね。」




確かに、楽しかった。

色々な形を次々に作り上げ、コタツの上には、みかんの皮動物園が出来上がっている。




「でももう10個くらいみかん食べたよ?……アレルギーになりそう。」




皮を剥けば、当然中身が残る。

大量の裸になったみかんと先程から格闘しているのだ。




「胃にもたれるものじゃないからね、僕は……あと1個いける。」




「だめえええ!!まだ20個くらい残ってる!!私は飽きたよ?!」




今度はスマホで、「みかん 余った」と調べてみる。だけどそれは大抵皮付きだ。実だけの保存方法は、あまりヒットしない。




「あっ、缶詰みたいに砂糖漬けにする?それとも、みかんジュースにしてみようか?」




ふと思いついたアイデアを口にしてみた。台所に行けば、ミキサーもあるし漬物の瓶もある。




「いいね、僕も賛成。」




総司くんは小さく手を上げた。

そうと決めたら、いざ………




「……だめだ、コタツから離れられない……!」




適度な暖かさが、全ての気力を奪う。すっかりお尻から根っこが生えてしまったようだった。

刻一刻と温くなっていくみかん。早く食べないと、多分某非営利団体から文句がくるくらい食べ物を無駄にする。




「とにかく……食べよう?総司くん?」




「そうだね……。」




少し考え込んだ総司くんは、目の前にあったみかんに手を伸ばした。

口に含んだ、そう思った矢先。




何故か私の口のなかに、甘酸っぱい味が広がった。

辛うじてそれを飲み込むと、リップ音をたてて総司くんが私の唇から離れていく。




「そ……総司、くん……?」




「どうしたの?君、すごく顔が真っ赤だよ?」




何事もなかったかのように、こちらを見て笑う総司くん。自分が原因だって、まったく分かっていない。

…分かって、いるのだろうけど。




「たまには味を変えてみればいいかな、そう思っただけなんだけど。」




皮でできた兎が、跳ねたような気がした。





fin.



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