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この冬の白さに 土方

がたんごとん…

電車に揺られてどれくらいが経ったのだろうか。

正直言って、今の私に時間感覚などなかった。




「……って、聞いてんのか。」




「あっ、ごめんトシく…じゃなくて歳三さん。」




「おい、なんだその改まった呼び方は。やめてくれ、調子が狂う。」




「だって…御家族の前でそんな馴れ馴れしく呼ぶわけにはいかないじゃない。」




そう、この年末年始を使ってはじめてトシくんの実家にお邪魔する。

トシくんの話から察するに、面白くて気さくなご両親ってイメージだけどそれはあくまでかわいい息子の前だけかもしれない。




「んなことはねぇよ、2人ともお前が来るの楽しみにしてるって言ってた。」




「そ、それでも緊張するのっ!ほら歳三さんが言っていた、ご両親の好きなお菓子持ってきたから。」




それとなく聞いた、トシくんのご両親の好きなもの。思ったよりも手軽なものでよかった。




別にご両親に格別気を遣っているわけではない。もちろん良好な関係を築けたらいいなって、思う。

だけど一番大切なことは、この出来事を通してトシくんとの関係をさらに深めること。

こうやって実家に連れてきてくれるってことは、……いろいろと期待していいはずだから。




「ひええええもう到着しちゃう!!!!どーしよ、どーしよ!もうどうしよう!!!!」




目的地への到着を知らせるアナウンスが流れた。噂の土方邸には、もう間も無く辿り着いてしまう。




無情にもドアが開いた。しかも改札口の前。

荷物を持って立ち上がり、ホームと電車の隙間を思い足取りで渡る。

駅員さんが辺りを指差しすれば、電車は何事もなかったように走り去っていった。




「えへんっ、それでは歳三さん、参りましょう。」




立ち振る舞いも、いつもよりお上品に。殿方の三歩後ろを歩いて。




「……だからいつも通りでいろって言ってるだろ。」




いつも隣に並んで歩いているから、どうやらトシくんは違和感を感じているらしい。それは、私もだけど。




「淑女たるもの……きゃっ!」




ここが定位置、と言わんばかりにトシくんが自分の隣へ導いた。堅く握られた手が、あたたかい。




「お前らしいところ、両親に見せてやってくれ。そっちの方が俺も助かるから。」




お得意の、口角をあげたその笑い方。




「……どうして?私、ドシでおっちょこちょいだけど…?」




トシくんはくすっと笑うと、そっと耳元で囁いた。




「…そんなとこ含めて、俺の自慢の嫁さんだって、紹介させてくんねぇか。」




fin.



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