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リハビリセンターの見学を終えて研究室に戻る。
ドアを開けると笑い声が聞こえて来た。お客さんかな?
「ハァイ、リン!」
BBJだ!
「ランチ、まだだろ?バーナビーと三人でどうかなって話してたんだ。俺の行きつけにいい店があるんだ。」
教授ってバーナビーと仲良しだったんだ!?


行きつけって学食ですか。まあ行きつけですよね。
「少し時間が空いたのでリンさんに会えるかなと思って。」
えっ。
「俺はついでか。」
「いえまさか!この間テスト装備した結果を早く知りたいかと思って直接来たんですよ。」
あ、だよね。びっくりした。
「でもリンさんとはもう少しお話ししてみたかったんです。ラボで、途中だったから。」
こちらを見てニコッとするバーナビーに窓からの光が降り注いで本当に輝いて見えた。

テスト装備の結果(装備については教授が簡単に説明してくれた)、私が午前中に見学して来た話、そしてあのヒーロースーツの技術の話…
話題は尽きない。
なにより斉藤さんのラボでみたテクノロジーの塊ともいえるあのスーツについて実際に使用している人の話を聞けるのだ。
バーナビーは些細なことでも面倒くさがらずに答えてくれる。
「オムライス、冷めるよ。」
教授の言葉に我にかえる。
しゃべりすぎた。恥ずかしい…。
専門用語も守秘も気にせず話せることが嬉しくて。
「つい夢中になってしまいました。リンさんのお話はわかりやすいし楽しいから。」
スプーンをもったまま、ね?というバーナビー。
なんだその仕草は。かっこかわいいじゃないか。
冷静を装ってオムライスを口に運んだ。

「リンさ、シュテルンビルト観光はどこか行ったの?」
「教授がそういう普通の事いうの珍しいですね。」
「俺だって常識人だぞ。」
はいはいそーですか。
「友人にお勧めスポットをリストアップしてもらったんだけどまだ全然。それ以前に街の構造が掴めなくて…。週末にゆっくり回ってみるつもり。」
「そうか。付き合えなくて悪いな。」
教授は学会控えてるしいつも忙しいもんね。
「僕がご案内できたらよかったんですけど、あいにく仕事柄お約束ができないものですみません。」
いやいやいや。街中にポスター貼ってある人に案内してもらうとかないですから!
「お二人とも、お気持ちだけいただいておきます。午前中に行ったセンターの人も案内してくれるっていってましたし。」
SBの人はこの街のことになるとみんな親切みたい。

バーナビーはランチを終えると仕事があるので、と帰っていった。
去り際に「困った事があったらいつでも連絡してください」とメモをくれた。
電話番号と思われる数字だけが書かれていた。
研究室へ戻ると教授がニヤニヤしている。
「よかったな、それプライベートの番号だぞ。」
え、まじで?
「まあ俺も知ってるけどな。」
ですよねー。
「「HERO TV始まりましたよ!!」」
奥の部屋から大きな声で呼ばれる。
二人で急いでTVの前に向かった。

ハイテンションのナレーションで始まったHERO TVに他のスタッフも集まっている。
これリアルタイムなんだよね?さっきまでバーナビーは学食にいたよね?
「リン、こっちにきてHERO TVみるの初めて?」
教授の言葉に頷く。
「再編集は見ましたけど、今流れてるのって生中継ですよね?」
強盗団を追いかけて斉藤さんのラボで見たあのスーツがビルの間を跳んで行く。
「近いっすね。」
院生に聞き返そうとしたとき窓が震えて、外を何かがすごい早さで横切っていった。
なに?今のなに?
「スカイハイはやっぱり早いっすねー」
今の?すかいはい?まじで?
テレビ画面にはひっくり返った車(逃走車だ)と手を振るスカイハイ、背景に大学が映っていた。
『まだ終わっていない!!さあ次は…』
追いつめられた犯人が銃を乱射するところにBBJが突っ込んで行く。
え?え?
早すぎてよく見えない。
次の瞬間にはポーズを決めたバーナビーと観念した犯人が映っていた。
終わっ…た?
「今日は早かったっすね」「ローズちゃんあんま出なかったな」「ハイさんかっこ良かったね」
緊張が解けスタッフ達がバラバラと戻って行く。

どこかまだ実感がなかったヒーローが、この街にいる。
これがSBの日常なんだ。
『WTが壊した壁なんてそこら中にあるし…』というコニーの文面を思い出す。
銃弾の中に飛び込み、壁を壊すほどの衝撃をうけるヒーローたち。
ヒーローってすごい。

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